2015年2月25日水曜日

作りものだった「ソウルメイト」: 理想化【3】

4. 君はきれいだ。
   あなたって、素敵。

サイコパス人間は、外見のことばかり気にしている。
あなたの洋服や髪型、肌の調子、写真映りといった、ごく表面的な事柄、それもたまたまその日目についたような事柄について何か一言言わずにいられない。
こんな人種、他には見当たるまい。


最初の頃は、そうした言葉もほめ言葉のように聞こえる。
「なんて君はきれいなんだ。」
「あなたってすごくイケメン。」
...今、自分がこんな人とお付き合いしているだなんて信じられない、私(僕)は、あなたのように優れた人の相手にはふさわしくないんじゃないか、...等々。
彼ら曰く、「公園を歩いても、君(あなた)より魅力的な人なんて見つからないよ」とのことだ。
(どうしてこんな言葉がほめ言葉となるのか、僕には今ひとつ分からないのだが。)


先に挙げたように、自分のコンプレックスとなっている部分(外見など)をほめてもらった以上、当然、あなたも相手へのほめ言葉を返し始める。
相手にも満足してもらえるように、その言葉は上手に選ばなくてはならない。
...相手があなたにとってもこの上なく素敵な人なんだ、ということがしっかりと伝わるようにしたいから。



まさに相手の目論見通りの展開となった。
最初は、まず、あなたの方にほめ言葉をシャワーのように浴びせかけて、いい気分にする。そうすれば、サイコパス人間をほめ称える言葉がお返しとしてすぐさま跳ね返ってくる。
全てが計算通りだ。



その段階を過ぎると、相手は急に安心したように、自分の写真を一緒に見よう、とさかんに迫ってくる。
もはや二人の交際は、単なる賞賛と賛同とのエンドレスなやり取りへと化したようである。



今や、彼らが発する一言一句が、あなたの自尊心を左右するようになってしまった。
なぜか?
彼らの口からは、間違いなくポジティブな言葉しか出てこないためである。
あなたは相手からの賞賛を受けて、自分自身が光り輝いていくのを感じている。ほめ言葉を聞くたびに体中が充電され、自信がみなぎってくる。
相手をあっと言わせたいという一心で、あなたは自分の外見磨きにますます多くの時間を費やすようになる。

©123RF



5.こんな気持ちになったのは、生まれて初めてだ


さあ、いよいよここから他人との比較が始まる。


サイコパス人間はあなたを崇め奉り、他のどんな人間関係をも超える高い地位へと押し上げようとする。
そして、「君(あなた)は、他のどの元・彼女(元・彼)よりも素晴らしい」と思う理由を、とくとくと...しかもやたら具体的な話とともに...並べ立てる。
しまいには、「この前、今みたいに幸せな気持ちを味わったのがいつの事だったか、思い出せない」とまで言う。



「ああ、何て幸せ者なんだろう、私(僕)って。」
彼らの口からは、しょっちゅうこのように大胆なセリフが出てくるはずだ。
幸せ宣言を聞かされたあなたの中には、「誰かを幸せにしてあげたい」というかねてからの強い願いが呼び起こされる。


あなたが一緒だと、他ではちょっと味わえない特別な喜びを感じる、と、彼らは力説する。それがまた、あなたの自尊心をくすぐるのだ。
...そう、この人が欲しいのは、唯一、私だけ。
ライバルは他にもいるけれど、誰一人としてこの私の足下にすら及ばない...。


サイコパス人間はあなたのことを「パーフェクト」「非の打ち所がない」と評し、さんざん持ち上げる。
だが、これが後々必ず訪れることとなる「お前はおかしい!」「あんたは嫉妬の鬼だ!」といった罵(ののし)り言葉へとスイッチが切り替わる時、あなたの側にとてつもなく大きな認知的不協和【*注】が生じる原因となるのだ。


【*注:参考記事 「認知的不協和の意味と例」より 

「人は自分の信念や、それまでの行動内容とは矛盾する、"新しい事実"を突きつけられると、"不快な感情"を引き起こします。その結果、自分の信念や行動と、"新しい事実"のどちらか一方を否定して、矛盾を解消しようとします。これを認知的不協和と呼びます。そのとき、信念を変えることが困難な場合、人は"新しい事実"の方を否定しようとします。」

論理的思考力と論理的な討論 議論 ディベート ディスカッション のHPhttp://ronri2.web.fc2.com/index.html)より引用させていただきました。】


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今、こうして過去を振り返りながら、思い出してもらいたい。サイコパス人間からのほめ言葉は、いつも薄っぺらく、計算ずくのものではなかったか。
しかも、誰に対しても同じようなことしか言わない。


【理想化】の段階は、ターゲットとなった人それぞれに異なった現れ方をするだろう。
だが、どの人間関係にも共通して言えることがある。
...今まで生きて来た中で「こんな気持ちになったことはない」と彼らが言う場合、確かにそこにウソ・偽りは無い。
だって、サイコパス人間は、自分がしょっちゅう口に出して言う程に「愛を感じた」経験など全くしていないし、「幸せを感じた」ことだって生涯ただの一度も無かったのだから。


軽蔑、羨望、退屈の三つの間を行ったり来たりする人間。
これがサイコパスである。
それ以外の状態など、彼らには無い。


6. 私達二人はソウルメイト


サイコパスが大好きなのが、「ソウルメイト」という考え方だ。
単なる恋愛とは一味違う、何か特別な匂いを漂わせる言葉である。
自分たちは高次の力が働いて結びついた、運命付けられた二人だった、というわけだ。
「ソウルメイト」認定を受けた、ということは、あなたがこの相手との関係に全身全霊を食い尽くされていく、ということをも意味する。
そうして生まれた心的きずなは、相手との関係が死に絶えた後もなお、あなたにずっとつきまとう。


おそらく、われわれの誰もが、心のどこかで「ソウルメイト」を待ち望んでいるのかもしれない。
人生を完全なものとしてくれる、完璧なパートナー。
何もかも全てを分かち合うことのできる、誰か...恋人と、親友とを兼ね備えた誰か...を、待ち望んでいるのかもしれない。


僕としては、そうした相手を待ち望むこと自体、おかしいだとか、間違いだとか言うつもりはさらさら無い。ここは強調しておきたいと思う。


サイコパス人間は、あなたが抱く夢や空想すら勝手に操作しようとするだろうが、それに屈してはいけない。
夢や空想を持つこと。
人間として、弱みを持つこと。
この二つは、同じではない。別物だ。
彼らはそう認めようとはしないだろうけど。 




サイコパス人間に捨てられた被害者の多くが、以前の人生に関わる物事全てを否定し、葬り去ることを選んでいる。
そして、「これ以上傷付けられるのはごめんだ」と言わんばかりに、自らの周囲に防御壁を高々と築き上げ、半永久的に外界との接触を断とうとしている。


どうか、それだけはやらないでもらいたい。


「ソウルメイト」の存在を信じる人は、きっといつか本物のソウルメイトに出会える。
やさしく、思いやりに満ちた男性/女性が、きっとあなたの前に現れる。
相手のやさしさが本物だから、あなたの方も自分の気持ちを疑ったりなどしない。
いかにも「作りもの」といった感じの熱烈さは無い代わりに、相手への熱い思いが自然と花開くように外へあふれ出る...といった関係が築けるはずだ。

 CC-BY-ND (https://www.wylio.com/より)


結局、サイコパス人間はあなたのソウルメイトではなかった。
この先も、永遠になり得ないだろう。
だって、あなたのソウルメイトとなる人間には、当たり前の事だけど、まず「ソウル(魂)」が備わっていなくてはならないのだから。
...彼らにはぽっかりと欠落している、「ソウル(魂)」が。



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