2018年10月19日金曜日

信じやすい心

2.信じやすい心

「考えるのはいい。 
だが、何もかも鵜呑みにしてはまずいのだ。」 
https://zooll.com/

これ、昔からあちこちで見かけるフレーズだよね。
グランド・フィナーレを既に迎えてしまった人にはぜひともじっくりと噛みしめてもらいたい。
常に頭の片隅に置いておくといいよ。


サイコパス被害から無事立ち直ったサバイバーに数多く接してみてわかったのだが、彼らが共通して持つ、ある種の性格的な特徴といったものは確実にあると思う。
中でも特に目立つのが、

・柔軟性に富む(オープンマインド)
・他人の言葉に影響されやすい

という二つの傾向だ。
もちろん、そうした性格が素晴らしい美点としてプラスに働く場合もあるよね。
これについては僕も異論は無い。


だが、扱いには少々のコツを要する、というのも、また事実である。
まずは自分自身の内側をじっくりと見つめることから始めよう。
自分にもいい部分があった、と満足するだけではだめだ。
そのいい部分を上手に使いこなせるようになり、より適した場所や使い道へと向けてやるところまでやって欲しいんだ。
その手間暇を惜しむようでは、遅かれ早かれ厄介事に巻き込まれるのは避けられない。


あなたは何度も「もしかして、私もサイコパス?」と自分に問いかけたのだったよね。
そもそも、そんな疑問が湧いてくること自体、あなたが石頭人間ではなく、ちゃんと心が開いていることを物語っていると思うんだけどな。
あなたの場合、自分がサイコパスだという明白な根拠があったから自分を疑い始めた、というわけではなかった。
発想が柔軟で、新しい見解を受け入れるだけの開かれた心を持つ人だからこそ、つい、自分自身を容疑者の一人にしてしまった。
ということで、この件についてはひとまず一件落着、としよう。



脳が何か新しい話を持ちかけて来たら、まずはその話に耳を傾けてみる。
来るものは拒まず、だ。
おおらかなあなたは、昔からそうした傾向が強かったんじゃないかな。
だとしたら、時にはお馴染みのパターンをわざと崩してみてはどうだろう。


「何これ。ちょっと、おかしくない???」
大いに笑い飛ばして、あっさりダメ出し。
終了。


といった具合に。
これからは、軽くいなしてやり過ごす、という技も使えるようになるといいよね。
何でもかんでも真に受けるだけが能じゃない。


僕が接触したサバイバーには


「私はひどい人間だ」


との思い込みを簡単に自分の中に取り入れ、そのまま手放さずにいたような人も少なくなかった。
僕としては、これが実に残念でならない。
そのような思い込みをする人に
「ひどいのはあなたじゃなくって、他の誰かかもしれないよ」
といった助言をしてみたところで、当の本人が聞く耳を持たないのだからね。どうすることもできないよ。


とはいえ、そのような人々だって、本来の自分らしさが徐々によみがえり、狂気の渦と距離を置くことができるようになれば、自虐的・自罰的な性格傾向にもやがては歯止めがかかってくるんじゃないかな。
狭くなっていた視野もより広く、そしてよりクリアーになっていくのが少しずつ実感できるようになるだろう。


ここまで来れば、
「私はOK、あなたもOK (I'm okay, you're okay)」【訳注①】

の境地へと到達したも同然、と言っていい。


一方、あいつと付き合っていた頃のあなたはそれとは程遠いところにいたはずだ。
ごくわずかな期間を除いて、


「私はOKじゃない、あなたはOK
(I'm not okay, you're okay)」【訳注②】

との思い込みにガッチガチに囚われていたあの時の自分。
忘れようにも忘れられないよね。



思えばよくぞここまで回復したものだ。
よく頑張ったね、と、自分を大いにほめてあげようではないか。

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※レファレンス協同データベース「『I'm OK. You're OK.』は誰の言葉か。http://crd.ndl.go.jp/reference/detail?page=ref_view&id=1000029241」へリンクします。

【訳注①・②】1950年代のアメリカで「交流分析 Transactional Analysis」という精神療法を創始したカナダ人精神科医のエリック・バーン Eric Berneが最初に使用したフレーズだと一般には言われています。

【参考画像:4つのライフ・ポジション https://www.pinterest.com/pin/496381190164112329/ 】


※「東洋医学の穴 http://o-medicine.net/」へリンクします。
なお、バーンと長年にわたり公私ともに親しい関係にあった精神科医・トーマス・A・ハリスによるこちらの一般向け解説書も、英語圏では未だに版を重ねて売れ続けています。(かつては部分訳の日本語版も出ていたのですが、絶版となってしまいました。)

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最近の日本語による交流分析(TA)解説書では、こちらがお手頃価格と読みやすさで好評のようです。人と人との間で知らず知らずのうちに作用する力学(ダイナミクス)に興味があるならば、交流分析、きっと気に入っていただけるのではないかな、と思います。面白いですよ!

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「良く言えば柔軟性に富む、悪く言えば流されやすい」。

そうした傾向が自分の中にある、という事実は覚えておこう。


実は、あなたのような人達は、他の性格タイプと比べても催眠による暗示や、他者からの意見といったものからの影響を相当受けやすいんだ。
一つ間違えば命取りとなるからね。気を付けて欲しい。


面白いのは、そうした性格も長所としてとらえることができれば、あなたならではの持ち味として活用できる、ということ。
そう。要は使い方次第さ。
だったらなおさら、上手な使い方をマスターしたいものだ。


性格の話が出たついでに触れておこう。


抑うつ状態(depression)が物の見方や考え方に暗い影を落とす、というのは珍しくない話だ。
一旦うつに陥ってしまうと、肯定的なことを考えるのは難しくなる。
頭の中には否定的な考えの方がより蔓延しやすいし、また、存在感も肥大化しがちだ。
「こっちの方が重要度高いぜ!」とばかりに自己主張して、肯定的な内容を押しのけるものだから、さすがの脳味噌だって否定的思考の厚かましさにころりと騙され、場所を空けてやらざるを得なくなる。


これはウィルス感染時に体内で起こることとよく似ている。
うつ病患者の体内では、できるだけ病状を長引かせようとする「うつ病独特の生き残りメカニズム」といったものが自然と出来上がるのだそうだ。【訳注③】

訳注③: 訳者は門外漢なので詳しいことはわからないのですが、ジャクソンさんの言う「うつ病独特の生き残りメカニズム」については、こちらのNIKKEI STYLE(2016年2月28日付)の記事内容が参考になるかもしれません。 
https://style.nikkei.com/article/DGXMZO96149410V10C16A1000000?channel=DF130120166091 



 (以下、上のリンク先記事の引用です) 
【うつ病になると、脳内の特定の部位にも変化が生じるという。「MRI(磁気共鳴画像法)で脳を調べると、情動を抑える帯状回(たいじょうかい)や記憶などに関わる海馬が、健康な人に比べて小さくなっている」と功刀部長は話す。 
 なぜこんなことが起こるのか。功刀部長は「じわじわ続く慢性的なストレスがよくない」という。ストレスにさらされると、体内ではそれに対抗しようとコルチゾールというホルモンが増える。「この状態が長期間続くと、過剰なコルチゾールが脳を傷害し、海馬などの萎縮を招く」(功刀部長)。】


「ポジティブ思考なんて、ただの妄想。まともに取り合うなんて、頭悪過ぎじゃないの?」
すっかり否定的思考に毒されてしまったあなたは、その否定的な囁きの中身が正しいのか、正しくないのか、などともはや深くは考えない。
頭に浮かんできたことは全て鵜呑みにし、それを自分の奥深くにどんどん溜め込んでいってしまう。


否定的思考の言う内容、丸ごと信じ込んではだめだよ。
頭の中では派手に暴れ回るだろうし、ぎゃんぎゃん大声でわめき立てもするだろうが、言い分が真実かどうかはきわめて疑わしいのだから。
結局、今となっては全てが自分の脳が仕掛けた罠だったとわかった。
あなたはその罠にまんまとはまり、脱け出せなくなってしまったんだね。



もうわかるだろう。
あなたは、サイコパスじゃない。


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2018年10月9日火曜日

「私、サイコパスかも?」

「私、サイコパスかも?」


サイコパス被害のサバイバーは、

「もしかして、私もサイコパス?」

との不愉快極まりない結論へとたどり着くことがある。
しかもこれ、かなりの頻度で起こるから厄介だ。


あなたは、何ヶ月もかけてこの問題について学んできた。
奴との間に起こったことも、何度も何度も頭の中で反芻(はんすう)してきた。
ここまでやれば、さすがのあなたでも自分の人格、自分の内にある善良さが果たして本物なのか、それとも偽物なのか、と勘繰りたくもなるよね。
そうなるのも致し方ないことだ。


確かに、お世辞にも気持ちの良い話題とは言えないからね。
なのに、一度はまると中毒性は相当高いと来ている。
いざ止めようと思っても、関心ゼロの状態へと一気に持っていくのは難しい。


考えごとをしていても、ふと気が緩んだ途端、たちまちサイコパスにまつわるあの話この話で頭の中がいっぱいになってしまう。一旦そうなると、流れはなかなか変えられない...。
こんな調子では、周囲の人間関係全てに仕入れたばかりのサイコパス知識を当てはめたくなるのもまぁ、当然だよね。


だが、疑いの目は否応なしにあなた自身に対しても向けられることとなる。


僕もいろいろ考えてみた。
そして、
【あなたはたぶんサイコパスじゃない】と納得してもらえるだけの理由をいくつか導き出すことができたように思う。


回復への道を歩む人にとって、最も有害で、避けるに越したことがないもの。
それは、


【私は邪悪な人間かもしれない】 
という、自分自身へ向ける執拗な疑い、そして蔑み


──ではなかろうか。



いいかい。
あなたの場合、自分が邪悪な人間か否か?なんてことで気に病む (worry) 必要など、少しも無いんだからね。
ちなみに、この「気に病む (worry) 」という単語、サイコパス理解の上で重要なキーワードだから覚えておくといいよ。


だって、本当のサイコパスだったら、自分が善か悪かといった問題で「気に病む」ことなど無いのだから。 
絶対に。


気に病まない、だけじゃない。
そもそも「気に留める (care) 」ってこと自体しないからね。連中は。



今、あなたが恐怖に震えている理由。
それは、あなたにとって、「サイコパシー」という精神の病があたかも諸悪の根源であるかのように感じられているから、だよね?


奴らのサイコパシー観は、一般人が抱くそれとは全く異なる。
自分が生じさせた問題に関して、「とんでもない病気」(実際、とんでもないんだけど)が原因だ、と奴らが認めることなど、まずあり得ない。
むしろ「病んでいる」こと自体が自分の強みだ、と本気で思っていたりする。
自分には良心が欠落している、それゆえ、自分は他よりも傑出した存在なのだ...。
サイコパスならば、そう考える。



さて、あなたはこのような奴らの発想パターンについていけるかな?
「まさか!」
「無理!」
...だよね。
当たり前だ。


だったら、どうしてあなたは「もしかして、自分もサイコパスなんじゃないか?」と、自分に対しても疑いの目を向けてしまうのだろうか。
考えられる理由は6つほどある。
順番に紹介していくとしよう。



1.サイコパスがあなたにそう思わせたから



サイコパスと付き合っていた時のことを思い出して欲しい。


奴は、最初から最後までずっと、自分自身の欠陥をあなたへの悪口という形に変換し、それをあなためがけて投げつけて来る...といったパターンを繰り返していなかっただろうか。



「意地汚い」
「嫉妬深い」
「重たい」
「口うるさい」
「性悪」
「頭おかしい」


...といった類の悪口を。


奴らの攻撃をまともに食らったあなたは,


「ああ、私ってそういう(意地汚い、嫉妬深い、重たい...)人間なんだろうな」


と、じわじわと思い込まされていったのだろうね。

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【訳者注:この、「少しずつ(相手の意向に沿うように)思い込まされる」というプロセスが、いわゆる「マインド・コントロール」ですね。詳しくはこちら⇓の本が参考になります。 
カルト宗教や怪しい自己啓発セミナー以外にも、マインド・コントロールによって人生狂わされるような場面はたくさんありますからね。もちろん、職場や家族関係などの身近な人間関係の中にもたくさん潜んでいます。ピン!と来た方、ご一読をお勧めします。】 
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「自己愛が他人を攻撃するセリフは自己愛本人が一番気にしてることそのままの『自己紹介乙』ってのが定番。」


(「モラハラ資料」内、「自己投影・投影同一視による攻撃」のページより引用。http://mora110.blog.fc2.com/blog-entry-22.html )

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では、ここで僕からあなたに質問だ。


「今まで、交際相手や友達と一緒にいて、対サイコパスの時みたいに『自分はダメ人間だ』『悪いのは自分だ』と思ったことはあったかい?」


【いつもさん(Constant)】と共に時間を過ごして、『自分はどうしようもない奴だ』と感じさせられたこと、あったかい?」



もちろん、答えはいずれも「NO!」だよね。
これら二つの問いに共通する要素、一体何だろう。
そこに着目するといいんじゃないかな。



上に挙げたような罵り言葉(意地汚い、嫉妬深い、重たい...等々)は全て、いわゆる「サイコパシー(精神病質)」に侵された人物の内側にある病んだ部分が表面に出たもの、として読まれるべきなのだ。
病んでいるのは、口汚く罵っている当の本人。


過去を振り返れば、あなただってそのような傾向(意地汚い、嫉妬深い、重たい...等々)を多少は表に出したことがあったかもしれない。
でも、それはある特定の人物と一緒にいた時に限っての話、だよね?
他の人々との間では全く問題にもならなかっただろう?



単なる偶然と片付けていいものだろうか。
「意地汚い、嫉妬深い、重たい...」
あいつと距離を置くにつれて、そうした負の性質は徐々に「姿を消していった」んじゃなかろうか?
だとしたら、それは単なる偶然などではない。



サイコパスの被害に遭った人々には、何か問題が起こると「私が悪かった」と一方的に思い込み、下手をすると相手の尻拭いまでやりかねないような、自責傾向の強い人が多い。


「私が全てを許し、あの人のことを理解してあげさえすればいいんだ。
そうすれば、以前のような夢の理想化段階が再び戻って来るに違いない。」


このような思い込みをしがちな人たちが、サイコパスの被害者の中には少なからず見られる。



しかも、被害者はその自責傾向の強さがあだとなって、後々さらに深刻な問題を引き寄せることとなる。
被害者は、サイコパスが犯した悪事や、その人格的な欠陥まで全部ひっくるめて自分の内側に取り込んでしまいがちだ。
だが、自分ではそのことに気付いていない。
気付いていないからこそ、「やっぱりあの人の言う通り。私ってつくづくダメな奴だな。」と、誤った結論を下し、自分を窮地に追いやってしまうのだ。



だから、自分らしさがむしばまれていきグランドフィナーレを迎えた頃のあなたは、自己嫌悪の巨大な塊と化していたはず。自分にほとほと愛想が尽きていたんじゃないかな。
そうなるのも無理はないよね。


かと言って、当時のあなたを一方的に責めるのはあまりにも気の毒というもの。
だって、あの頃のあなたはサイコパスから盛られた毒を受け止めるただの入れ物でしかなかったのだから。
あなたらしい部分などほとんど残っていなかった。


これから先は、時間の経過が何よりの薬となるだろう。
「ノーコンタクト(絶縁)」ルールを厳守し、サイコパスから距離を置いていれば、本来のあなたらしさも徐々に戻ってくることだろう。
そう。
奴から受けた罵り言葉は、どれもこれも根も葉もない中傷だった。
あなたとは何ら関係の無い、めちゃくちゃな言葉の羅列でしかなかったんだよ。



奴の魔の手から無事逃れられれば、しめたものだ。
「違う! 私はそんな醜態をさらすような人間じゃない!」
いつか必ず、確信を持ってそう言えるようになるよ。





実際、あなたは前にも増してより優しくなり、
共感力が高まり、
他人への心遣いにあふれているように見えるよ。



また一段と本来のあなたらしさにぐっと近付いてきたようだね。
本当のあなたと再び巡り会える日も、もうすぐだ。