2018年9月5日水曜日

喪失の段階---Part 2 ②意図と加虐嗜愛(サディズム)

意図と加虐嗜愛(サディズム)

サイコパスにまつわる「神話」のうち、「いくらなんでもそれは…」とつい言いたくなるものの筆頭に挙げられるのは

「サイコパスも、実は誰かの犠牲者となった人々なのだ」

ではなかろうか。
そう、いわゆるハリウッド流の、偽心理学かぶれがいかにも好みそうな、「あの俗説」だ。


虐待を受けた過去。
父親不在の環境。
もしくはそうした断片のつぎはぎから成る話。
原因は何であれ、【サイコパスはどうしても自力ではその行動を抑制できない】との結論に至る諸々の話、ということでとりあえずまとめておこう。


僕は、この説に真っ向から反対だ。


サイコパスは、自分の行動が他人にどんなインパクトを与えるかをはっきりと自覚した上で行動に出ている。
他の精神障害を抱えた人とサイコパスとを分けるのはこの点だ。
他人がもがき苦しむ様子が、楽しみのように感じられる人種。
それがサイコパスである。


サイコパスは、他人の中に自信の無さや弱さがあれば、あっという間に嗅ぎ分け、そこに意識のフォーカスを絞る。そして、自分の都合のいいように利用する。
善と悪との境界線は奴らにも見えていないわけではない。
が、たとえ気付いたとしても、あいつらはそれを平然と踏みにじる。
獲物を決めたら、後はひたすら襲い掛かるのみ。
善悪の区別なんて知るか、そんなものクソ食らえ...とつぶやきながら。


サイコパスの人間関係についても、巷では多くの誤解が見られる。
確かに、無神経さや感情面での「鈍感さ」は奴ら独特のものだ。
だが、それらを単なる偶然からひょっこりと生まれた「副産物」のようなもの...
などと軽く考えていては、後々大変なことになる。
あいつらの場合、何もかもが綿密な計算に基づいているんだよ。
きちんと系統立てられたプロセスを、個々の被害者に合わせて使い分ける。
そうやって被害者をじわりじわりと傷めつけていくのだ。


ちょっと想像してみてごらん。
ある人が語る夢や希望の内容をそっくりそのまま模倣できるようになるのに、一体どれほどの時間と計画が必要だろうか。
一朝一夕にはできないよね。
だから、サイコパスは、何ヶ月も・・・時には何年も・・・の長い時間を費やして、相手に貼り付く。
そして本来の自分とは全く異なる、別の人格へと成り代わるんだ。
目的は何かって?
...あなたをぶっ壊す。
ただそれだけだ。


あなたへの愛なんて、これっぽっちも感じていなかったんだ。
「こんな気持ちにさせてくれたのは、君だけだよ。生まれて初めてさ。」
なんてくさいセリフを吐いた時ですら、ね。


そう。
あいつは、最初から最後まで、あなたを至近距離からじーっと観察していただけに過ぎない。
本当のお楽しみが始まるあの瞬間を、今か今かと待ち続けていたのさ。辛抱強くね。
気付いていただろう?
あなたが奴との恋に落ち、付き合いが密になり、関係が安定期に入ったかな、と思った途端、精神面での虐待行為が始まりはしなかっただろうか?
そこからは地獄のような日々が続いたはず。
あいつが成りすましていた「ソウルメイト」の面影を求め、「もう一度あの頃に戻って!」との虚しい夢を半狂乱になって追い求めていたあなた。
気が付いた時には捨てられていた。
そうだったよね?


ここで問題にしたいのが、サイコパスからの虐待を生き延びたサバイバー達の多くに共通して見られる、考え方の歪みだ。
どういうわけだか、サバイバー達にとってのサイコパスは、「心の奥深いところには子供のような自信の無さが根強くあって」、それゆえに「人からの関心を追い求める方向へとどうしても駆り立てられてしまう」といった人物像に仕立て上げられる傾向にあるようだ。


とはいえ、サイコパスは別に自信欠乏で苦しんでなどいない。
むしろ自分のことが大好きでたまらない程だ。
自分の外見も好きだし、コロリと人を騙す話術だってなかなかなものだ、と自負している。
「お願い、許して」と被害者をひざまずかせる自分って本当にすごいよな、とうぬぼれてさえいる。


あなたは確かにサイコパスと付き合っていた。
だけど、その交際期間中、あなたが奴の「壊れた魂」の内側にある空洞を埋める、なんてことは一度たりとも起こらなかったはずだよ。



だって、サイコパスには魂が無いのだから。


奴の望みはひたすら他人から崇められ、持ち上げられること。
それに尽きる。


だから、間違っても「強面(こわもて)の奥には、所在無さげに震えている小さな男の子/女の子がいる」などといったイメージを、サイコパスに重ね合わせちゃいけない。
「多少の誤作動もやむを得ない。どうしても治せない、性格面での脆さを補うためにこの人が発達させた防衛機制なのだから。」
とのこじつけも、いい加減に止めるんだ。


「でも、あの人にも優しいところはあるのに。」
まだそんな戯言言ってるの?
奴らの心をいくら覗いたところで、見えるのはどこまでも続く暗闇だけだよ。


「ノーコンタクト(絶縁)、やってみようかな。
気にかける人が一人減れば、さすがのあの人も何かが変わったな、と気付くだろうし。」
そうした甘々な考え方も、いずれは全て手放していく必要がある。
今はまだ、時期尚早かもしれないけれども。





かつて、あなたは奴の個人的な欲求を満たせる存在であった 。
(もしくは、今もなお、そうした存在であり続けている)...。


そんな思い込みをいつまでも引きずっているからこそ、上のような甘ったるい発想となかなか縁を切れないんじゃないかな。
捨てちまえよ、そんな思い込み。


はっきり言うよ。
あなたは奴の欲求など何ひとつ満たしては来なかった。
そして今後も絶対にそのようなことは起こり得ない。


奴のようなサイコパスには、外からの注目はもう必要じゃないんだ。
外から注目されようが、されまいが、あいつのエゴは既に充分過ぎるほど、パンパンに膨れ上がっている。
この先も、しぼむことなどまずあり得ない。それは僕が全力で保証するよ。


もし、ああいう連中が他人の関心を求めるとしたら、目的はたった一つだけさ。
相手に食らいつき、骨までしゃぶり尽くし、最後にぶっ壊すこと。
これだけだよ。



そもそも、奴はあなたのことだって、ゴミ同然にしか見ていなかった。使ったらポイ捨てすればいい、と思っていた。
ひょっとしたら再利用される機会が巡って来るかもしれないけどね。
でも、勘違いしてはいけない。
「あなたのことが必要だから」再利用されるのでは、ない。
断じて。


ここ肝心なんだけれども、誰かがあなたに関心を寄せたり、その関心をまた引っ込めたり、といったゴタゴタに巻き込まれる恐れがあるようでは、せっかく治りかけている病も悪い方へと逆戻りしかねない。
ノーコンタクトを貫き通さねばならない理由、それはあくまでもあなた自身が


「私にはもっといい相手がいるはず」


本気でそう信じられるようになったから、でなければならないのだ。


あいつがどんな奴だったか思い出してごらん。
あなたを陰から操り、嘘ばかりつき、虐待を重ね、深い傷跡を残した。
そういう奴だったよね?



自尊心が芽生え、大きく育っていくににつれて、あなたも少しずつ理解できるようになると思うよ。
あれだけのひどい仕打ちをされたという事実だけでも、人ひとりを人生から追い出す理由としては充分過ぎるくらいさ。


...奴には永久追放処分が妥当なところだろうね。