2019年6月5日水曜日

無邪気さの消失【1】

無邪気さの消失

症状:深い悲しみ、哀惜の思い、寂しさ、現実受容、世界を新たな角度から見直し、希望、知恵のひらめき。

悲しみと鬱状態。
この二つを同じものとして扱ってはならない。


絶望と恐れとに乗っ取られ、精神が麻痺したような状態。
それが【鬱状態】だ。


一方、【悲しみ】という言葉からは、そこはかとなく美の香りが漂っては来ないだろうか。
ところが【鬱状態】の方にはそれが無い。
美的要素があるか、無いか。
ここに着目すれば、【悲しみ】と【鬱状態】とを区別するのはそう難しくはない、と僕は思う。


今やあなたの魂は再び息を吹き返し、新たなる一歩を踏み出そうとしている。
この時期のあなたには【鬱状態】よりも【悲しみ】という言葉の方がむしろ似つかわしい。


嘘偽りの無い、本物の【悲しみ】が次々と波のように押し寄せて来る。
そんな自分に気付けたら、「よくがんばったね」とねぎらってあげよう。
ここまで来ればもう大丈夫だ。
長い長いトンネルの出口はすぐそこにまで迫っている。光が見えてくるのも時間の問題だろう。


空っぽで不毛な心にも、しくしくと痛む古傷にも、そろそろさよならしていい頃だ。
少しずつで構わないから、心の準備だけはしておこう。
いつ何時、次のステージに移行せよとの合図が出ても慌てなくて済むように。


あなたの「ソウルメイト」は死んだ。
嘆いてばかりいても仕方がない。今さらどうにもできやしないのだから。
後ろばかり振り返るのもいい加減止めにして、歩かなきゃ...。
覚悟を決めて、あなたはようやくここで自分と向き合う。
そして再び喪の哀しみへと引き戻される。
「二度と戻って来ない」のは、あいつだけではなかった、と気付いたからだ。
そう。【一昔前のあなた】もまた、永遠にこの世から消え去ってしまった。


以前は暇さえあれば奴のことばかり考えていた。
なのに、ある日を境に今度は「失われてしまった自分」の方へと急に関心が向き始めた。
───サイコパスと出会って、別れて、一体どれだけのものを失ったのだろうか。
幾度も幾度も同じ疑問文が頭の中を回り続ける。


ほとんどのサバイバーは口を揃えたかのようにこう答えるだろう。
「たくさん」。

友人関係。
お金。
仕事上のチャンス。
自尊心。
健康。
人間としての尊厳。
人により「損失」の内訳は違うけど、相当の痛手を負った、という事実はサバイバー全員に共通している。


だけど、上に挙げたような「損失」にしたって、実はあなたが思うほどダメージは大きくないんじゃないかな。
なぜかって?
後から取り戻そうと思えば、どうにかして取り戻せる可能性のあるものばかりだからさ。


あなた自身が一番根っこの部分へと立ち返り、本来のあなたらしさを取り戻していくにつれて、全てが「収まるべきところに収まる」はずだ。
だから焦らない方がいいよ。
バラバラになっていたパズルのピースも、本来の場所に戻りさえすればぴたっときれいに収まって、最初からずっとそこにあったかのように見えるだろう?
あなただっていつかはそうなる。自然に事が運ぶようになる。


以前と比べて明らかに良くなる部分もあるだろう。
その最有力候補が対人関係だ。
少し前だったら考えられなかったような人々との縁が生まれたり、付き合う人々の質が明らかに変わったりするかもしれない。


だが、たった一つだけ、あなたがどう頑張ったところで絶対に取り戻しができないものがある。


かつてのあなたが持っていた無邪気さ(innocence)だよ。

Image by Free-Photos at Pixabay

断っておくが、僕はこの

「無邪気さ(innocence)」

という単語に

「無知(ignorance)」「世間知らず(naivete)」

のような、相手を蔑むようなニュアンスを込めるつもりは全く無いからね。
どうかそこだけは誤解しないでもらいたい。

【訳注: innocenceは純真無垢、天真爛漫、汚れの無さ 
...といった訳が当てられているように、プラスイメージの強い単語です。
「邪悪さとは一切無縁=>邪気が無い=>無邪気」 
と理解すればいいでしょう。】

ここでの「無邪気さ(innocence)」という単語は

【人間ならば誰だって、ひとつぐらいは長所があるものだ】という性善説に基づく思い込み
といった意味だ、と理解して欲しい。

別の言い方をするならば、無邪気さとは
相手の言動をできるだけ良い方に解釈してあげようとする善意
とでもなるだろうか。


誰かを信じ、愛し、身も心も全て惜しみなくその人へと捧げ尽くす。
「無邪気な人」は、えてしてこの手の恋愛パターンに陥りやすいものだ。

【過去記事:「信じやすい心」 「「良く言えば柔軟性に富む、悪く言えば流されやすい」。
そうした傾向が自分の中にある、という事実は覚えておこう。

実は、あなたのような人達は、他の性格タイプと比べても催眠による暗示や、他者からの意見といったものからの影響を相当受けやすいんだ。一つ間違えば命取りとなるからね。気を付けて欲しい。」
https://sayonara-psychopath.blogspot.com/2018/10/blog-post_19.html


様々な修羅場をくぐり抜けたことで、あなたはすっかり変わってしまった。
以前のようなおめでたい人間観からは卒業し、一歩退いたところからクールに他人を眺めることもできるようになった。
あんな地獄に一度突き落とされたんだ。そうなったとしても不思議は無いよね。


人を疑うということを知らず、まるで無邪気が服を着て歩いていたような人。それがかつてのあなただった。
二度と戻って来ることは無いだろう。