2019年4月19日金曜日

認知的不協和リターンズ

「時が経てば傷も癒えるさ」
「日にち薬は効き目一番」(※注)


(※注)「日日薬(ひにちぐすり)」の意味 https://dictionary.goo.ne.jp/jn/264268/meaning/m0u/ 
Image by Angelo Rosa from Pixabay


これ、おおむね正しい、と思う。
さすがは昔から使われてきた言い回しだけのことはあるよね。


だが、壊れた心が回復するまでの道のりが平たんで、見通しの良い一本道となることなどめったにないものだ。
このまま何事も無くゴールまでうまく逃げ切れるだろう、なんて甘い読みをしていると、こっぴどく裏切られることもあるだろう。


中でもよく見られるのは「度忘れ」という現象だ。
例の相手と付き合っていた頃どれほどひどい思いをしたか。
どんなに辛かったか。
そうした記憶だけが不思議にポッコリ抜け落ち、また、思い出そうとしてもなかなか思い出せない...。
実際、そうした経験をする人は少なくないのだ。


これは「選択的記憶喪失症」(selective amnesia)と呼ばれ、人間に生まれながらにして備わっている心のメカニズムのひとつとされている。
人間の心には、辛い記憶を「選択的に度忘れ」させることによってその人を守り、治癒・回復させる方向へと誘導していく、という大切なタスクを同時に成し遂げる、という優れた機能がはじめからインストールされているのだ。


 


そのような時、あなたは特に気を引き締めていかなければならない。
でないと、「許し」についていろいろと思いを巡らせた挙句、別れたあいつに自分から連絡を取って「ランチでもどう?」なんてわざわざ誘う、なんて暴挙に出かねないからね。


...もう一度直接会って話せば、自分の中のモヤモヤもきれいさっぱりと解消できるんじゃないか。きちんとケジメを付けられるんじゃないか。
そんな間違った期待を抱き始めるようになったら、危ない、危ない。


頼むよ。
それだけはやらないで欲しいんだ。
一度相手にこちらからすり寄って行くような真似でもしようものなら最後、またもや悪夢の無限ループ、となるのがオチだから。
相手の術策にまんまとはまり、ズタボロに虐げられ、さらなる深手を負うことだけは間違いない。


ようやく心の安定を取り戻した今のあなた。
人はえてしてこんな時、心の安らぎと楽観主義という色付きフィルターをかぶせたレンズでもって、過去の人間関係を見てしまいがちだ。
映ったイメージがどれほど良く見えようと、所詮それはあなたの内面の状態を【投影】したもの(projection)に過ぎない。


今の自分の状態が良好だからといって、過去の人間関係もつられて状態が良くなる、なんてことは残念ながらあり得ない。
だから自分の記憶をごまかしちゃだめだ。
真実を見失ってはいけない。


誤解なきように言っておくけど、僕にはそうした心の色付きフィルターが100%悪だ、と決めつけるつもりなど毛頭無いからね。
これはこれで大切な役割を果たしているんだ。
平和、安らぎ、楽観主義...といった色の付いたフィルターが僕らの心に備わっていたおかげで、頭の中をひっきりなしにピュンピュン飛び交う矢のような激しい思考活動にも圧倒されることなく、しんどい時期を乗り越えてここまでどうにか生き延びて来れたのだから。


暗かった気分が次第に晴れやかになっていく。
もちろん、これは喜ばしいことではあるけれど、その良い気分を【即、行動に移したくなった】時には、二、三回深呼吸してよくよく考えた方がいい。
自ら地獄へと再び舞い戻るような無謀な真似だけは絶対に避けなくっちゃならない。


ここまでの回復のプロセスを振り返ってみてごらん。
全てはあなた一人が自身の努力でもって成し遂げてきた偉業だ、誰の力も借りずに自分だけでやってきた、ってことがよくわかると思うよ。
あなたの気分が良くなりつつある理由、それはあなたがサイコパスときっぱりと絶縁し、以来、あいつとの接触を徹底的に避けているから、だろう?



そこを勘違いして、
「そろそろきちんと二人の関係にきっちりとケジメを付けよう、大丈夫、今ならうまくやれるはず。」なんて早まった行動に出てはいけない。
取返しの付かないことになるよ。



またあいつと関わり合いになるっていうのかい?
悪いことは言わない。やめときなよ。
あの不毛な、苦しみばかりの日々が再度繰り返されるだけだから。
この本の前半で長々と書いたような嫌な出来事ばかりの毎日がリピート再生されるのなんて、もううんざり、だろう?



「加虐者(abuser)を許すべきか、許さざるべきか」。
この問題については、本書の最終章でより詳しく僕なりの見解を述べるつもりでいる。


あなたには引き続き


ノーコンタクト/絶縁


を徹底的に貫き通してもらいたい。
自分のことを優しく扱ってあげようよ。
これ以上辛い目に遭う必要なんてないじゃないか。


ノーコンタクト。
今はそれさえ守れればいいんだ。
後のことは後で考えるとしよう。