2018年3月19日月曜日

「あの人、どうしてあんなに幸せそうなの?」【後編】

いいかい。

あなたには、悪いところなんて無いんだ。
それと同じで、新ターゲットの彼女/彼の方があなたに勝っている、ということもない。



あなたと新ターゲット。
二人とも、全く別の人間だ。
強いて共通点を挙げるなら、二人とも奴から愛情爆弾の攻撃を受け、褒め殺しでもって骨抜きにされた、ってことぐらい。
あなた自身に特に欠陥があったのでもないし、性格に難ありだった、というわけでもない。


奴があなたに対して行った【理想化】だけど、あれはあなたを支配し、思いのままにするための一手段でしかなかったんだよ。
あなたのことを「賞賛した」わけでもないし、「価値を認めた」わけでもなかった。
今のあなたなら、それもわかるよね。


「あの人と自分、一体どちらが魅力的だろう」
「どちらの方が成功してるかな」
「どっちが頭いいだろう」
つい、比較したくなるよね。
でも、そんなことはどうでもいいんだよ。



サイコパスは、新しい獲物を見つけてロックオン態勢に入るやいなや、その全エネルギーを新ターゲットへと集中させる。
仮にあなたが世界一の美貌、ユーモアのセンス、頭の良さとを併せ持っていたところで、奴は気にすら留めないよ。
あなたは既に過去の人。今となっては取るに足らない存在となってしまったんだ。


別にあなたの素晴らしい特質が失われたわけではないし、他の誰かと比べて劣っている、というわけでもないんだ。
単に奴があなたに向ける「好意的な関心」の在庫が底を突いた、というだけ。
「無い袖は振れぬ」ってことだね。


「もしかして、あの人、嘘ついてるの?」と、あなたは次第に疑心暗鬼になってくる。
で、思い切って相手に詰め寄ってはみるものの、「疑うのか。じゃ、そういうお前は一体何様のつもりだ」と逆ギレされてあえなく終了、となる。


「どうしてあの時うまく対処できなかったんだろう」
「もっと違うやり方もできたのに」
こじれた原因、今からでも知りたいよね。
僕らだって人間だ。あんな理不尽な目に遭わされたら、つべこべ言わずに黙れと言われてもそんなの無理だよ。


だけど、僕はあなたにもっと別のことを伝えたい。


今のままのあなたで、そのままで充分だよ。
そこだけは分かって欲しくて、それが言いたくって僕は今、この本を書いている。
「もっと違うやり方もできたのに」なんて自分を責める必要なんて全く無いよ。



確かに、サイコパス気質の持ち主と関わってしまったのは不幸と言わざるをえない。
でも、あなたがどれほどあいつのために善良さを発揮したところで、関係はいずれ暗礁に乗り上げていたと思うよ。
あなたが他にできたことなど、実は何も無かった。


相手の虐待的な行動も、選択も、本来のあなたが持っていた数々の長所が引き起こしたわけじゃない。全く無関係だ。
仮に奴がそうした長所に気付いていたとしても、蓋をして表に出さないようにする方向へとあなたを誘導し、調教していたはずだしね。



さて。

あなたはようやく自由になれた。

今度はあなた自身が、自分の中に埋もれている長所を見つけ出す番だ。
その作業に取り組まない限り、健全な自尊心は育っていかない。
他人と自分とを比較する悪い癖からも、もうそろそろ卒業しよう。


サイコパス被害から生還したサバイバーが口々に語っているのが、

「別れた相手が、新しい彼女/彼氏と一緒にいるのを見てしまって、健康を害した」

という体験談。

喉の奥がキューンと締め付けられた。
呼吸が浅くなり、息苦しくなった...。

このような話は珍しくない。


いいかい。わざわざ好き好んでそんな辛い目に遭わなくたっていいんだよ。
まずは身体からの声に耳を澄まそう。
身体は常にあなたを守りたがっている、ってこと、覚えておこう。
あいつらの動向をスパイ気取りで追っかけてみたところで、いいことなんて少しも無いよ。
身体はそのこともちゃんと知っている。




できれば、あなたには

【ノー・コンタクト(絶縁)カレンダー】

を一つ用意してもらいたいんだ。
今後、あいつと新カノ/カレの動向は一切チェックしない、と自分自身に約束して欲しい。
約束を守り通せるように、精一杯自分を励ましてやって欲しいんだ。


僕らのホームページ、PsychopathFree.comでは、新規登録してくれた人全てに【ノー・コンタクト・カウンター】が与えられるんだけど、これを使えば、別れた相手と絶縁してからの期間が一目でわかる。


【注:著者のジャクソン・マッケンジーさんは本書”Psychopath Free”の続編を執筆中。彼の多忙を理由に、PsychopathFree.comは現在新規会員の募集を停止しています。
過去記事アーカイブは誰にでも閲覧可能です。】


ノー・コンタクトの期間を長く続ければ続けるほど、あなた自身もだんだん楽になるはずだ。

以前はあれほど憎いと思った新ターゲットだけど、そのうちある種の同情にも似た気持ちが芽生えてくるだろう。
「あの時点で虐待から逃れられたのは、彼女(彼)が現れてくれたおかげ。」
今ならば、そう考えられる。


サイコパスな奴らは、犠牲者に対してはハッキリと「別れたい」との意図が伝わるような形で相手を切り捨てることが多い。
こういうやり方で「力と支配」を誇示したがるんだ。


だが、サバイバー側の人間が「もうこれ以上耐えられない」と限界に達し、サイコパスの呪縛を振り切って自分から逃れる、というケースだってあるにはある。そう多くはないけれど。
もし、あなたの方からサイコパスに別れを告げるというのなら、それ相応の覚悟はしておいた方がいいだろう。
ストーカー行為や、嫌がらせの類がその後何ヶ月も───さすがに何年、とまでは行かないかもしれないが───延々と続く可能性が充分あるから。



奴はあなたの人生をメチャクチャに破壊したくて、あらゆる怒りを総動員して反撃・脅し行為へと出て来るはずだ。
あなたに代わる別の犠牲者が現れるまで、その攻撃は止まらない。
ネット上で偽の人格や偽アカウントを作り出し、あなたの行く先々へと現れる「サイバースト―カー」となる恐れもある。


そうした嫌がらせ行為を続ける人間って、どうも自分のことを「支配権」を握った強者だ、と錯覚しているらしいんだ。
奴を切り捨てたあなたがまともに生きていけるはずがない、という幻想にしがみつきたくってたまらないんだ。


もしかしたら、「もう一度やり直そう」と、あちらから復縁を迫ってくるかもしれない。


騙されちゃいけないよ。


これ、奴の持ちネタの中では最も危険な最終兵器だからね。
あなたをぐぐっと引き寄せ、再び一緒になったところで、一気にちゃぶ台をひっくり返し形勢逆転、破滅をもたらしてやれ、という魂胆なんだよ。
復縁にさえ持ち込めば、自分の都合や気分に応じてあなたを捨てられる、って思ってやっているはずだ。


「え!? 何それ⁉︎ ただ捨てるだけのために、手間暇かけて別れた相手をおびき寄せるだなんて...」
普通はそう思うだろう?
ああいう連中はこういう事平気でやるんだ。実際に。
まさにそこがサイコパスなんだよ。常人には到底理解しがたいことだけど。


「どんな形でもいい。連絡が欲しい。まだ私は忘れ去られていない、って確かめたい。」
サイコパスとの関係が絶たれた後でも、幾度となくそんな思いに苦しんだサバイバーはたくさんいる。


でもね、あいつが他の人へと移ってくれたのは、結局あなたにとっては良いことだったんだよ。
不幸中の幸いだった。


まだ信じられないって?


だったら、誰でもいいから、サイコパスに自分の方から別れ話を切り出したことのある人に聞いてみればいいさ。


彼らの体験談を聞けば、別れた後に相手からは何の音沙汰も無かった、一回も連絡して来なかった、というあなたのケースがどれだけ恵まれていたかが、嫌っていうほどわかると思う。



2018年3月9日金曜日

【コラム】「そしていつまでもふしあわせにくらしました」

サイコパスと今度の彼/彼女。
今のところは「パーフェクト」のようだ。とりあえず交際も順調そうに見える。


奴は今、例の「理想化」作業にせっせと取り組んでいるところだよ。
あなたに代わる新犠牲者のことをさかんに持ち上げ、天にも昇るような心地にさせているらしい。
その様子、いちいち見せつけてくるのだから、まったく癪に障るよね。
(あなたに気付いてもらえるようにとケチな小細工施すところがまた、何とも腹立たしい限り。)


「自分には無いけど、今度の相手にはあるもの。
さあ、それって一体何だろう...?」


答えは出ない。なのに、あなたはそれでも自分に問い続ける。


でもね、「完璧な二人」の蜜月期って、そう長くは続かないんだよ。
理想化のプロセスが一段落すると、あっという間に退屈するのがサイコパス。
そうなると、次から次へと頭の痛いことが押し寄せてくるはずだ。
心なしか、奴の顔にも疲れの色が表れ始める。


この苦しい気持ちからどうにかして逃れたい。自由になりたい。
そこで今回新たにスタートするのが、新犠牲者へのいじめである。
ただ、犠牲者をもてあそび、傷めつけたところで、得られるものはそう多くない。
ほんの束の間の解放感でも得られれば、それで御の字としよう。


ただ、これもまた、一時しのぎの解決策でしかない。
サイコパスにちょっとやそっとの刺激を与えてみたところで、──たとえば、犠牲者がひざまづき涙ながらに命乞いするとか、自ら墓穴を掘って破滅していくとか──何か極端なことでも起きない限り、奴らの荒んだ心はますます荒廃の一途をたどる。
「もっとくれ、もっとくれ!」と叫ばずにはいられなくなる。


かくして、終わりなき虐待のサイクルは幾度も幾度も繰り返されていくのであった。


「あの人、私と別れた後に一緒になった他の誰かと、本物の幸せを見つけられたかな...?」


まだそんなこと考えているのかい?


幸せなんて、見つけられるわけないじゃないか。


だって、あれだけの猛毒と侮蔑とをあなたの顔面めがけてブシャッ!と吐き出すような奴だよ。
そいつがある日突然、別の誰かと巡り会い、たちまち恋に落ちる。
そして二人はいつまでも幸せにくらしました、めでたしめでたし...


どう考えたって、そうはならない。


猛毒と侮蔑。
この二つを、愛情と共に併せ持つことなんて、まず不可能だろう。
最後の最後には必ず物別れに終わるから。
あたかも水と油のように。



【参考資料】 
「本当の退屈がどんなものかを理解するには、子ども時代を思い出すといい。幼年期から思春期にかけての子供はよく退屈する。耐えがたいほどの退屈を感じるのだ。 
(...) 
 さいわい、大人はたえず刺激を必要としたりしない。ストレスはあっても、刺激が耐えがたいほど過多でも過少でもない、かなり穏やかな覚醒状態の中で生きている。


 だがサイコパスは、つねに過剰な刺激を求める。スリル中毒とか危険中毒など、中毒という言葉が使われることもある。
こうした中毒が起きるのは、刺激への欠乏をおぎなう最良の(おそらく唯一の方法が、感情的な生活であるためだ。


 多くの心理学の教科書には、覚醒感情的反応という言葉がほぼおなじ意味で使われている。

私たちはほかの人びととの意味のある結びつきや約束ごと、しあわせな瞬間やふしあわせな瞬間から刺激を受けるが、サイコパスにはこの感情的な生活がない。

人との関係の中でときにつらさやスリルを味わうという、つねに覚醒した状態を彼らは経験することがないのだ。」 
(「良心をもたない人たち」マーサ・スタウト著、木村博江訳、草思社文庫、pp. 249-250 )

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