2017年2月7日火曜日

臨時ターゲット【2】

統計によると、サイコパス人間から虐待を受けた人は、「もう限界」と気付いて絶縁するまでの間、「離れては戻る」ことを7回は繰り返すのだそうだ。
だが、臨時ターゲットの場合、話は少々違ってくる。

これら二通りの関係を図式化してみよう。


【サイコパス人間と普通のターゲットの関係】

理想化(注1)
 
 
脱価値化(注2) 
 
理想化 
脱価値化 
 
理想化 
脱価値化(以下同様)
最終的には完全崩壊
(注1) 理想化 についての参考過去記事。「作りものだった「ソウルメイト」: 理想化【1】」

(注2)「モラハラ資料」理解を深めるための用語集 より引用。

■脱価値化 
自分の期待どおりの反応をせず(褒めてくれない、感謝してくれない、愛してくれない、拒絶された、批判されたなど)欲求不満をおこさせたり自尊心を傷つけた相手を価値のない人とみなす防衛機制。「自分を認めてくれない相手には価値がない」と考えることで心を守ります。 

NPD【引用者注:Narcissistic Personality Disorder=自己愛性パーソナリティ障害の略】は自分の期待や依存を満たしてくれるときは手放しで『賞賛』しますが、少しでも拒絶したり批判したりするとその評価は180度変わって、『こき下ろし(全否定の攻撃的非難)』の対象となり、人間関係が安定しない。


【サイコパス人間と臨時ターゲットの関係】


生ぬるい理想化段階。話の内容だけは前向き。
あなたの期待は否が応でも高まる。 
 
いきなり捨てられる。
一切の前触れ無し。


臨時ターゲットは、関係をきちんと締めくくる機会すら奪われてしまうのだ。何度も繰り返された暴力発生のパターンを顧みることすらできない。
そりゃ、相手からの暴力なんて無いに越したことはないさ。
でも、一方的にいきなり捨てられたとあっては、宙ぶらりんのまま置き去りにされたも同然だ。



とんでもなく高い場所から、これ以上下がりようが無い程のどん底レベルへと真っ逆さまに突き落とされたあなた。
一体自分に何が起こったのだろう。
気付く暇など無かったし、今後の見通しだって全く立たない。心理的拷問以外の何物でもない。

相手へと捧げた熱い思い、そして、その相手からポイ捨てされた、というむごい事実だけがあなたの元に残された。


サイコパス人間と関わると、誰もがこうしたマインド・ゲームの罠にはめられてしまう。例外など無く。
ただし、臨時ターゲットの場合、【理想化】段階を100%満喫させてもらえないままズルズルと引きずられ、最終的に突然ポイッと捨てられてしまう。この点が普通のターゲットと最も違うところだ。


普通のターゲットとの関係では、【理想化】段階にもそれなりの時間をかけるものだ。
相手の仕込みにたっぷりと手間暇をかけ、二人の関係を安定させ、そして最後には華々しく爆発させる。これがお決まりのパターンだ。
ところが、臨時ターゲットにされたあなたは、そうした一連の流れを全く体験するところまで行く前に、相手から捨てられた。
どうしてだろう?


サイコパス人間にとって、あなたは最初からその場限りの、つなぎ用の相手でしかなかったからだよ。
誰かに関心を寄せてもらい、尊敬の眼差しで見つめてもらえるのであれば、あちらとしては願ったりかなったり、大満足であった。
たとえそれがほんの束の間であっても。
ちょうど欲していたものを、たまたま通りすがりのあなたが持ち合わせていただけ。
それ以上に深い意味は無かった。



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とはいうものの、あいつらだって、あなたが思慮深い心、そして優れた感受性を備えた人だってことは勘付いていたはずだ。
だって、あなたは今、この文章を読んでいるじゃないか。
それが何よりの証拠だよ。ここにたどり着いたのは決して偶然なんかじゃない。
...常に真実を追い求め、自分の身に起こったことの正体をしっかりと見極めようとする人。本来、あなたはそういう人なのだ。
これだけは誰が何と言おうとごまかしようがない。


サイコパス人間だって最終的には交際相手を特定の一人に絞り込むわけだけど、そこで最も必要とされる条件は「鈍感であること」。
あまり賢い人を相手にしてしまうと、あいつらの卑劣な振る舞いもいつかは見破られてしまうからね。


だから、今、あなたがこの文章を読んでいるとしたら、それはサイコパス人間があなたに途中で見切りをつけて撤退した、ってこと。
もっと簡単に騙せるカモを相手にした方がいいや、って判断を下したのだ。



何ヶ月先か、何年先か、何十年先かはわからない。
それでも、あいつらとの交際を続けていくうちに、化けの皮が剥がれる日はいつか必ずやって来る。あなたのような人が相手なら、そのような結果へと導かれるのも、至極当然の成り行きだろう。
あいつらはね、永久に騙されたままでいるようなターゲットを欲しがっているんだよ。
自分の正体が暴かれることを心配しなくていい。
そういう「カモ」だけを相手にしたいんだよ、彼らは。


長期的に付き合えそうなターゲットを取り込み、キープしておくことは、サイコパス人間の方にもメリットが多いはずだ
どれだけ嘘をついても、他の相手と火遊びしても、一切とがめだてはしない。責めたりしない。
そこまでできた相手が常に傍にいて、自分に合わせてくれるのであれば、それはそれで何かと重宝だよね。


だが、サイコパスはそのようなターゲットたちに対しても、少しずつ恨みつらみをつのらせていく。
なんだこいつ、自分はただ演技してるだけなのに、それすら見破ることができないのか。頭悪いな...。
と、ターゲットのことを心の奥底で見下すようになる。


全く、奇妙キテレツな話じゃないか。
あいつらと来たら「この程度でいいかな」と値踏みして手を打った人々に対しては「非の打ちどころがない、よくできた人」との印象を必死に残そうとしてくさい芝居を続ける。
その一方で、より共感能力に優れた人物をマインド・ゲームへとおびき寄せ、じわじわ痛めつけては七転八倒の苦しみを与えたいとも思っている。その方がスリル満点で、はるかに面白い展開となるからね。


とはいうものの、サイコパス人間にとって、こうした共感能力に優れた人物を長らくキープし続けるというのは、そう容易なことではない。
だから、一人の交際相手からまた別の交際相手へと移る「過渡期」にのみ、そうした人物を捕獲しては搾取する。ピンポイント的な使い方をするのだ。
最終目的地に着く前に、ちょっとだけエネルギー注入させてもらうよ、といった感じで利用するのである。


(人並み外れて高い共感能力を持つ人物の場合、ごくまれにではあるが、何年もの間にわたってサイコパス人間との関係が続いてしまうことがある。僕らの掲示板にも、そのような体験を持つ人が何人も書き込んでくれた。サイコパス人間との間に子供がいるため、逃げようにも逃げられなかったケースが大半のようだ。
そのようなしがらみに縛られているような場合、最後の最後で相手から捨てられた時に味わう苦しみは、筆舌に尽くしがたいほどひどい、ということを随分聞いている。)



2017年2月1日水曜日

臨時ターゲット【1】

この項は、僕が親しい友人と交わした会話に基づいている。少々個人的な域に踏み込んでしまった感もしなくはないが、まあ、読んでみて欲しい。
内容には若干の編集を施し、できるだけ幅広い読者層に共感してもらえるような形へと仕上げたつもりだ。


自分以外にも、例のサイコパス人間と関わって痛い目に遭った人々は何人か知っている。でも、他の人々が受けた待遇と自分のそれとを比べてみたとき、どうも自分一人だけが「使い捨て」のような扱いを受けたように思えてならない---。
そのような苦々しい気持ちを抱いている人はいないだろうか。
もしあなたがそうなら、ぜひ以下の部分を続けて読んでもらいたい。


サイコパス人間は次なる獲物を求めて常に徘徊し続ける。
そんな彼らでも、一つの「ステディな」関係に終止符を打ち、次の関係へと移っていく過渡期にあっては、何かしらの(もしくは、誰か)つなぎ役を必要とするようだ。
どっちつかずの宙ぶらりんな時期、そこにぽっかりと空いた隙間があれば埋めなければならない。


そこで彼らが触手を伸ばすのが、「臨時ターゲット」。
文字通り、これはあくまでも一時しのぎのターゲットに過ぎない。
新たな獲物が現れた時点で即、ポイ捨てされる運命にある、そういう人々だ。



もし、あなたがこの「臨時ターゲット」に該当するのであれば、僕がこの本でずっと書いてきたサイコパスな交際相手の態度と、実際にあなたが体験したこととの間には、多少異なる部分があるかもしれない。


サイコパス人間があなたと付き合っている間、「これからも末永く二人でいられたら...」などと思うことは、間違ってもあり得ない。
次は誰を狙おうか、なんてまだはっきりと決めていない時期であっても、同じこと。二人の将来をどうするかなんて、一切考えたりしないのだ。
だから、あなたとの関係も急ピッチで深めようとしきりに迫って来るのだ。
何事も、手早く。
【理想化】の段階からあなたのことを引きずり下ろしに掛かる作業にしても、だらだらと時間を費やしたりはしない。


その【理想化】段階にしても、実に杜撰(ずさん)でいい加減なものだ。手抜きのし放題である。
まず、金は出し惜しみする。
自分からは何の行動も起こそうとしない。
あなたを特別扱いすることもない。
動くのは口先だけ、だ。
ひたすら言葉のシャワーだけは浴びせかけてくるものの、それ以上の手間暇はかけない。



そんな相手の手口に、あなたはまんまと引っ掛かってしまったんだよね。せめて言葉だけは嘘・偽りの無い真実であってほしい。そう信じていたかったから。
でも、あなただって、途中からはうすうすと気付いているだろう?
あいつらはいつでも言行不一致なんだよ。
言っていることとやっていることが全然違う。

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あなたにとって、この相手との関係は何にも代えがたい、とても大切なもの。
だって、他人からここまで関心を注いでもらい、理解を寄せてもらったのは、あなたにとって生まれて初めての体験だったのだから。
そう思うのは当たり前だよね。



それに、あなたは「誰かを幸せにしてあげたい」という夢をひそかに抱き続けてきた人。「苦しみ」や「悲しみ」(本人談)を無数に潜り抜けてきたという愛する人を支えたい、と考えるのはごく自然な流れだろう。
...この人、私のことを本当によくわかってくれているみたい。ずっとひとりぼっちで、何度も心が折れそうになったけど、こんな私にもようやくソウルメイトが現れた。...。


残念ながら、これら全ては真っ赤な嘘だったのだ。


サイコパス人間にとって、あなたは単なる気晴らし程度の相手でしかなかった。
彼らの「臨時ターゲット」に対する扱いのひどさは、特に目に余るものがある。こちらから働きかけても、返ってくるのは「どうでもいいよ」といった、そっけない態度だけ。
こんな調子では、さすがのあなただって「この人、冷たい...。」と感じないわけにはいかなくなってくる。



相手からのひどい仕打ちにもめげず、それでもなお、せっせと相手に愛を注ぎ続けるけなげなあなた。
あとちょっと自分が努力すれば、そうすればあの【理想化】段階の日々が戻るかもしれない...。
そんな淡い希望を抱いたことも、今振り返ると虚しい。



サイコパス人間のターゲットとなった人が陥りやすい精神状態がある。それが、【認知的不協和(cognitive dissonance)】だ。

【*注:参考記事 「認知的不協和の意味と例」より

「人は自分の信念や、それまでの行動内容とは矛盾する、"新しい事実"を突きつけられると、"不快な感情"を引き起こします。その結果、自分の信念や行動と、"新しい事実"のどちらか一方を否定して、矛盾を解消しようとします。これを認知的不協和と呼びます。そのとき、信念を変えることが困難な場合、人は"新しい事実"の方を否定しようとします。」

論理的思考力と論理的な討論 議論 ディベート ディスカッション のHP(http://ronri2.web.fc2.com/index.html)より引用させていただきました。】


自分の中ではちゃんと筋が通っていると思われるような、理屈。
僕たちはそうした理屈を目の前にいる特定の相手へと投影するわけだが、ところがおおよそまともな理屈など通じない、理不尽だらけの奴が相手だと、後に残るのは「何かがおかしい」といったモヤモヤ感だけだ。


そもそも、サイコパス人間の行動に関して言えば「たまたま起こった」ものなど皆無である。
同様に「別にこれと言った深い意味は無い」ものも、また、あり得ない。
ああいう人間たちの場合、やること為すことの裏に、何かしらの隠された意図が必ず存在するものだ。



そしてとうとう、心が木っ端微塵に砕け散った、例の瞬間がやって来た。
あなたは捨てられたのだ。
相手は、新しい彼女/彼氏の方を選んだ。



しかも、その新しい彼女/彼氏とは将来のことも視野にいれての真剣交際をしている、というではないか。付き合い出してからまだ日も浅いというのに。
同居生活を始め、ネット上でツーショット写真を公開し、あれを買った、これを買った、といった話をしきりにばらまいている。
あなたが相手との間にずっと夢見ていたような幸せな日々。
あの二人は今、まさにそれを実現しようとしている...。


そこまでの特別扱いなど、何一つ体験させてもらえなかったあなた。
人間として生きていて、これ程にまでひどい屈辱感を味わうこともそうそう無いだろう。


なぜ、相手はあなたに近付き、交際関係を結ぼうとしたのか。
それは、単に力と支配権とをあなたから吸い上げて、自分をクイックチャージしたかったから、である。
で、用が済み次第、即、ポイ捨てすればいい。
最初っからそう決めていたのだ。
再びエネルギーレベル満タンになった相手は、あなたの元を去り、意気揚々と次なる大冒険へと旅立ってしまったのであった。