2015年2月18日水曜日

作りものだった「ソウルメイト」: 理想化【2】

1.同じところがたくさんあるね


価値観が同じ。
笑いのツボも、一緒。
二人とも、人の気持ちに寄り添えて、いつも友人や家族のために奔走している。
何もかもが完璧な、そんな私たち。


サイコパス人間は、こうした点を執拗に幾度も強調しては、我々の頭に焼付けようとする。
「僕たち/私たちって、もはや一心同体って感じだね」とすらのたまうことだって、珍しくない。


【理想化】の段階では、もっぱら聞き役に徹する彼ら。
あなたの話に聞き入って、「僕(私)も同じ気持ちだよ!」と、熱っぽく反応する。

Couple dining in the Carioca Room of the Americana Hotel - Bal Harbour from Flickr via Wylio
© 1957 Florida Memory, Flickr | PD | via Wylio

こうなると、あなたも「ここまで自分に似ている人なんて、後にも先にも現われないのでは」と、考えるようになってくる。


その通り。
現われるはずがない。


二人の人間が何から何まで同じだなんて、全くもってあり得ない(第一、気持ち悪い)ではないか。


普通の人間同士ならば、違いがあって当たり前である。
他人と自分。違いがあるからこそ、人生は面白くなる。
ところが、サイコパス人間は、そうした面倒さを一切バイパスしてしまう。


なぜって?
彼らには「自分」が無いからだ。
「自分はこういう人間」という感覚が、彼らには無い。
人生経験を積み重ねていないから、自分には何が必要で、どんな弱点があって、ひそかにこういう夢を抱いていて...といった、人を人足らしめる【中身】を築き上げることなく、ここまで来てしまったからだ。


だから、あなたの人生経験を盗まずにはいられない。

don't steal plants away from Flickr via Wylio
© 2007 hiroaki maeda, Flickr | CC-BY-ND | via Wylio

そして、カメレオンよろしく、自分の性格を隅から隅まで改造しては、あなたの【完璧なパートナー】像にぴったり一致する人間へと変身するのである。



2.願いも一緒。夢も一緒。


あなたは、サイコパス人間にじわじわと毎日を蝕(むしば)まれつつある。
実は、彼らはあなたの未来までも支配しようと目論んでいるのだ。
せめて手間隙かけた分の元ぐらいは取らなきゃな、とばかりに、彼らは二人の将来に関して、次から次へ約束手形を連発する。
約束さえ与えておけば、あなたはずぶずぶと深みにはまる。そこまで行けば、ちょっとやそっとの事では逃げ出さないだろう、という魂胆だ。
先の見えない恋愛にしがみつくなんて、まぁ、まともな人間ならまずやらないだろうしな...。


そこを熟知しているからこそ、先手を打っておくのだ。
彼らは、付き合いの早い時期から結婚・同棲といった、人生を左右しかねない重大なイベントについての相談を始める。
普通、健全な人間関係にある人ならば、こうした話へと辿り着くまで数年かかることだって珍しくないのだが。


だが、あなたの場合、そこまで長々と待つ必要は無い。
だって、もう自分でもよくわかっているじゃないか。
残りの人生を、ずっと、この人物と一緒に過ごすことになるだろう、ってことを。


結婚して、いずれは子供のいる家庭を...と夢見ている人ならば、その幸せファミリーの構図にはしっかりと「あの人」が含まれているはず。

A Happy Family - Vintage Photo from Flickr via Wylio
© 2009 Tony Alter, Flickr | CC-BY | via Wylio
いつかは起業家として独立を...と考えているのであれば、「あの人」が頼もしい右腕的存在となって、ずっと傍にいてくれるはず。
今は泥沼の結婚生活から抜け出せないけど、「あの人」が現・配偶者を追い出して、その後釜に座るための手はずを整えていてくれるはず...。



お気付きだろうか?
彼らの描く「計画」は、常にあなたの側に一方的な犠牲を払わせるものだ、ということに。
...彼らが何かを犠牲にすることは、決して無い。


3.傷付いた部分まで同じだね


もちろん、彼らはこんなセリフ、間違っても口にすることは無いだろう。
だが、相手は人の弱点を瞬時に嗅ぎ分ける達人である。あなたの中に潜む弱点をそっくりコピーして表に出し、あなたから憐れみの情を引き出そうとする。
これにより、あなたは「自分だったら、こう接してもらうと嬉しいな」と願っているようなやり方でもって、サイコパス人間の「問題」を癒してあげよう、と、意気込む。
Angel from Flickr via Wylio
© 2009 bl0ndeeo2, Flickr | CC-BY-ND | via Wylio

共感能力の高い人々は、臆面もなくゴマをするような人、自信過剰女・男といったタイプには興味を持たない。
むしろ、それとは真逆の、純真で、思いやりあるタイプの人に惹かれるものだ。


あなたが彼らの中に自分と同じ傷を見つけるやいなや、その共感能力はますます増幅することとなる。
目の前にいる人が、「ダメな奴だな、自分...。」と、落ち込んでいる。
その姿に、あなたはつい、「任せて。私、あなたを元気にしてあげるから。」と、妙に張り切ってしまうのである。


とにかく、この相手は特別な人。過去に付き合った誰とも似ていない。
何たって、あなたがしたこと全てに対し、手放しで賞賛してくれている、というのだから。
あなたを以前付き合った彼氏・彼女たちと比べては高々と持ち上げ、「あなた(君)が最高!」と、崇(あが)める。
その言葉にあなたは「ようやく今までの努力の全てが報われた」と感じ、しかるべき使命を与えられたような気持ちになる。
これまで付き合った人達ときたら、こっちがいろいろと尽くしてあげても「ありがとう」どころか、逆に不平不満をたらたらと並べ立てるばかりだった、というのに。
でも、もうそれすらも、今となっては遠い過去。...


サイコパス人間を憐れみ深い目で見るようになったら最後、あなたの本能には歯止めが利かなくなる。
相手のために尽くしまくっては、「どれほどあなたのことを気遣っているか」をわかってもらおうと、何から何までやってしまう。


だが、彼らがこの時何を考えているか。
あなたには想像もつかないだろう。


傷。
弱点。
彼らにとっては、人を操り、コントロールするための道具に過ぎない。



幼子のような「かよわい人」を演じるお決まりの手口は、背後にある意図に気付かれないようにかぶる、格好の隠れ蓑(みの)なのだ。


Shaun innocent face from Flickr via Wylio
© 2009 John Chan, Flickr | CC-BY-ND | via Wylio




【参考資料】
「得意わざは空涙
だが、性的誘惑は彼らの手口の一つにすぎない。人はサイコパスの演技力にも惑わされる。良心なしに人生を組み立てるには、欺瞞(ぎまん)や幻想が必要になる。そこで知的サイコパスは演技が巧みになり、プロの役者なみのテクニックまで駆使する。


   そして皮肉にも、自在な感情表現がサイコパスの第二の天性になる。相手の悩みや 情熱に対する興味津々な態度、胸を叩いて訴える愛国心、正義感あふれる憤り、謙虚に赤らめる顔、悲しげなすすり泣き。思いどおりに流す空涙(そらなみだ)は、サイコパスの得意わざだ。
   (中略)
サイコパスは、 
相手に自分の正体がばれそうになったとき、とりわけ空涙を使う。 
だれかに追いつめられると、彼らは突然哀れっぽく変身して涙を流すので、道義心をもつ人はそれ以上追及できなくなってしまう。」 
 (pp127-128、大字での強調は引用者による。)

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