以後、サイコパス人間はあなたの立ち居振る舞いに、事細かに干渉してくるようになる。
はっきりと、直接的な物言いはしない。
それよりはむしろ、間接的で遠回しな言い方を巧みに用いて、ああしろ、こうしろ、と被害者の言動に注文を付けてくるのである。
最終的には被害者もそうした相手の言い分を受け入れてしまう。
相手は、あなたのやることなすことに口出ししてくる。
その間、外の世界に見せているのは「罪の無い、いい人」の顔だけ。
だから、「どうして気持ちがざわざわするんだろう。あっ、そうか、あの人から言われたことが原因だ!」と早い段階で見抜ける人など、ほとんどいない。
ところで、サイコパス人間は暇さえあれば元彼・元彼女をこき下ろしているものだ。
これはあなたを持ち上げ、ほめ上げるために彼らが使う、お決まりのテクニックである。
既にお気付きかもしれないが。
いいかい。よく聞いて欲しい。
奴らがあなたに対し実際にやっていること、あれは「調教」だ。
「元・彼(彼女)はいつもこうしていた。でも、あなた(君)は、まさかそんなことするはずないよね。」と言いながら、実際は「私/俺が決めるルールに沿って行動しろ」と、命令を下しているのだ。
相手は、とにかくあなたのことをほめて、ヨイショと持ち上げる。
それが嘘か真(まこと)かはさておくとして。
えっ?そこまで相手がほめるような長所、自分には思い当たるところが全く無い、だって?
まぁ、あなたにそうした長所があるか、無いか、なんて、正直な話、サイコパス人間にとってはどうでもいい事だ。
もはや、これを「ほめ言葉」と呼ぶわけにはいかない。
これは、「警報」である。
...「いい?もし、元・彼/元・彼女と同じ過ちを繰り返すようなヘマをしたら、お前/あんたなんて即、切り捨てだよ。別れるよ。」と、あなたに向けて発信された警報だ。
大体、そのような「過ち」など、元彼・元カノの誰一人として現実に犯したこともなく、「過ち」自体が作り話である可能性が高いのだが。
間接的な言い方でこの相手が伝えようとしていること。
それは、
「もし、彼/彼女として認めてもらいたければ、見返りとしてかくかく、しかじかのやり方で振る舞うのは至極当然だろう?」という期待、である。
以下、そうした間接的説得話法の代表的な例を紹介しよう。
1. 「前の彼女/彼とは、しょっちゅうケンカばかりだったよ。
僕(私)たちは、ケンカなんかしないよね。」
2. 「前の彼/彼女は、いつも電話をかけてきてはだらだらと長話ばかり。
あなた/君は、そんなに手のかかる/面倒くさい人じゃないよね。」
3. 「前の彼女/彼からは、『仕事見つけたらどうなの』といつも追い立てられてばかりだった。
君/あなたはもっと理解ある人だよね。」
もう一度繰り返そう。
今挙げたようなセリフは、あなたへのほめ言葉なんかじゃない。
「〜してくれて当然だろう?」という期待、だ。
この相手は、自分が聞かれたり突っ込まれたりしたら困る質問を避けるため、予めあなたの物の見方を歪(ゆが)めておこうと企んでいる。
真実に気付いて欲しくないから、真実から遠ざけておこう、というわけだ。
彼らの脳内には「自分を不愉快にさせる感情・チェックリスト」が常備されていて、いつでも参照可能な状態に置かれている。
【俺/私の前で、不愉快な感情を表に出すな。さもないと、ひどい目にあうぞ。】
こうしてあなたはまた一つ、相手からの間接的説得に屈していく。
そもそも、普通の共感能力を備えた人間は、愛する人と他の誰かとを比較したりなどしない。
誰かを真剣に愛していれば、「過去に付き合った男(女)の誰よりも、今の彼氏(彼女)は素晴らしい」なんてこと、自分にも、周りにも言い聞かせる必要など全く無い。
同様に、たとえ恋愛感情が冷めた後でも、「あいつとの付き合い。もう、最悪だったね。」などと、声を大にして自他に訴える必要は無い。
しかし、これを現にやってのけるのが、サイコパス人間だ。
それも毎回、確実に。
なぜ彼らはこのようなことを繰り返すのだろうか。
要はあなたを操りたいのである。
意図的に話を曖昧にし、わかりにくくすれば、それだけ他人を操るのは簡単になる。
ここまで相手に付き合ってきたあなた。
たとえ相手と口論にになった時でも、ごく短時間で、しこりを残すことなく全て丸く収める技術にかけては、達人の域に到達したことだろう。
...あの人の元彼女/元彼みたいになりたくないから。
3日間、相手から何の音沙汰無し、となっても、自分からは電話をかけない。
...あの人の元彼女/元彼みたいになりたくないから。
すっかり怠け癖がつき、もう半年も職無し、という相手に対しても、あなたからは何も言わない。
...あの人の元彼女/元彼みたいになりたくないから。
もし、相手が作成した計画案から少しでもはみ出そうものなら、それこそ大変だ。
無視・黙殺の状態が続くか、もしくは「君(あなた)、おかしいんじゃないか。」というキツい一言が返ってくる。
...ちやほやと持ち上げられていい気になっている【理想化】の段階なんて、今すぐにでも終わらせられるんだよ、という非情な現実を、あなたの眼前でちらつかせるかのように。
サイコパス人間から逃れた人々が、相手から受けた虐待の日々を振り返ってみて最も強い怒りを感じるのは、まさにこの部分である。
あなたは、自分の直観、そして自分の欲求を脇に押しやってしまった。
そして、ひたすら相手にとって「都合のいい人」になろうと努力してきた。
他の誰にも実現できなかったような特別待遇を彼に/彼女にプレゼントしてあげられるのは、この私しかいない。僕しかいない。
あの頃はそう信じて疑わなかった。
だが。
あの人は、何の前触れもなく元・彼女/元・彼の元へと戻ってしまった。
あなたと三角関係で火花を散らしてしていたはずの、元・交際相手のところへ。
そこに至るまでの間、あなたは一体どれだけ「仕事、見つけたら?」と言いかけたのを必死に飲み込んだことだろう。
もっと頻繁に電話して欲しい、という気持ちだってひたすら抑え続けてきた。
「良きパートナーになるための努力ぐらいしてほしい」の一言すら言えなかった。
何もかも、あなた自身の手で脇に押しのけてしまっていた。
だって、そうする以外に方法は無い、と、ひたすら信じ込んでいたから。
あの人と一緒にいたいのであれば。
...あの人の「良い面」と一緒にいたい、と願うのであれば...。
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