【自爆モード】。
これ、人の気持ちに寄り添うのが上手な人、つまり「共感力豊かな人」のほとんどには生まれながらにして標準装備されているんじゃないかと思う。
悪化する一方の人間関係を修復したくて、全力を尽くした。
だが、結局どうすることもできなかった...。
そんな時にスイッチON!となるのが、この【自爆モード】。
(まぁ、あれ以上努力したとしても、遅かれ早かれ行き詰まっただろうね。今ならわかるけど。)
では【自爆モード】の4段階、順番に説明していこう。
1.尽くし過ぎ
あなたは周りで起きる物事や身近な人々のことが気になって仕方がない。そこで、持ち前の共感力を発揮し、なんとかして彼らの気持ちに寄り添ってあげようと、精一杯頑張る。
新しく出会った人には、できるだけのことをしてあげよう、と出血大サービス。
できれば愛情と感謝というリターンが得られればうれしいんだけどな...と、ひそかな期待を抱きながら。
だが、いざ蓋を開けてみると、集まったのは少々訳あり物件といった感じの人ばかり。
彼らの尻拭いに忙殺されたため、予想以上に多くの時間とエネルギーとを奪われてしまう。
「別にそこまで気が合う人ではないけれど...」
それはわかっている。
とはいえ、今更縁を切るわけにもいかない。
「あんな人たちなんかのために、どうして...」と後々ひどく悔やむことになっても、時既に遅し、なのだ。
「この人/この状況に私が寄り添ってあげれば、きっと良い方向へと向かうはず。」
どうやら、あなたは妙な使命感のようなものに取り憑かれてしまったようだ。
2.怒り
気が付いたら周囲には「満ち足りる」という言葉の意味さえ理解できないような人々ばかりが群がっていた。
その痛々しい事実、まだあなたは直視できずにいるかもしれないね。
どいつもこいつも恩知らずばかり。
あなたがどれほど尽くしてやったところで、それ相応の見返りなんてあるわけもない。
これまで自分がしてきたことが全くもって無意味だった、と気付いたあなた。目の粗いザルで必死に水をすくおうとしていたようなものだ。
ようやくここで目が覚めた。
「あれほど一所懸命に助けてやったのに...」
今までの努力は一体何だったのだろう。
ついに怒りが爆発する。
そして、過去の自分、世間に見せてきた「表向きの顔」に対しても宣戦布告を突き付ける。
もう「いい人」を演じるのは懲り懲りだ。
これ以上いいようにこき使われてたまるもんか。
だが、その怒りも少々度が過ぎてしまったようだ。
殺気立った言動ばかり繰り返すあなたにうんざりした友人が、一人、また一人...と、遠ざかっていった。
3.孤独
夢と希望を大切にする人なら誰でも、一人静かに過ごす時期を人生のどこかで必ず持つことになる。
それも、かなりの長い間。
はじめは心地悪いなんてものじゃないだろう。
誰かに認めてもらえないと「自分は価値ある人間だ」との実感が持てない。だから、物心ついてから今までずっと、他人からの評価にすがりつくようにして生き永らえてきた。
そのような承認欲求の強い人にとって、人生初の一人ぼっちで過ごす時間はただただ辛く、しんどいものでしかないだろう。
やがて、この「一人の時間」は徐々に「楽しみの時間」へとその性質を変えていく。
人間って、他人からの反応を意識している間は、自分の内側に目を向けたり、悩み事や心の葛藤にがっちりと正面から向き合ったり、といったことにはなかなか気が回らないものなんだ。
唯一頼れるのは自分自身の判断だけ。
それが大いに推奨されるこの時期は、人生有数の、またとないチャンスだ。
やり方さえ間違わなければ、あなた自身の本当の姿が発見できると思うよ。
というのも、僕らにはどうしても「孤独な、一人きりの時間」が必要なんだ。
孤独な時間が無ければ、自分自身の立て直し作業などできやしない。
闇世界の使者のようなあいつとの出会いによって全消去されてしまった自分を、これから一つ一つ作り直していかなければならないのだ。
この際、もう一度ゼロからスタートするつもりで気合い入れていこうじゃないか。
4・バランス
1、2、3、と順を追って読んでもらえば、キーワードのようなものがおぼろげながらも浮かんで来ると思う。
あなたも既に気付いているんじゃないかな。
そう。
大切なのは「健全なバランス感覚」なんだよ。
いくら身近な人々だからといって、その意見にいちいち同調しなくたっていいし、気持ちの上で寄り添ってやる必要だって特に無いんだ。
共感力は誰彼構わず発揮すればいい、ってもんじゃない。
あなたの信頼と親切心を受けるにふさわしい人たち...つまり、受けた恩にはきちんと報いる、という作法を心得た人たち...のためだけに大事に取っておけばいいよ。
で、ここぞ!という時だけに使えばいいのさ。
そして、「いいようにこき使われたくない」からといって、何も強面(こわもて)をして横柄に振舞う必要など無いからね。
私にだって自尊心(self-respect)はあるのだ、と他人にはっきりと伝えたければ、生き方にそれを語らせればいいだけのことだ。
「自分自身を大切にする(respect)」という生き方でもってメッセージを発信すればいいんだ。
最後にもう一つ。
「これ以上傷つくのは嫌だ」との理由で、世間から引きこもり続ける必要も全く無いからね。
世の中に善良な人は大勢いる。
しかるべきやり方に則って古い自分をとことん破壊し、過去をすっきりさっぱり清算できたら、その時はあなたも不思議なことで満ち満ちたこの世界へ戻ってこれるよ。
再び世界の一員となって、活動できるようになる。
とにかく、健全なバランス感覚を見失わないことだよね。
それさえ注意すれば、本来あなたに備わっていた数々の資質は新たなる「才能」へとさらに高められ、華麗なる再デビューを果たしてくれるはずだ。
頼もしい助っ人となってあなたのことを終生支えてくれることだろう。
読者の中には、この【自爆モード】のスイッチに触れるのが恐ろしくて、何年間も、何十年間もひたすら逃げ続けてきた、問題を避けて来た...という人もいるかもしれない。
確かに逃げたくなるのもわかる。
だって、スイッチひとつで「ドッカーン!」と自分が破壊されるんだよ。
大地震並みの激しい揺れと、大混乱といった極度の精神的ストレスに嫌でもさらされることになるんだよ。
気乗りしなくて当たり前だよね。
だけど、あなたのように豊かな共感力を持つ人が本気で救われたいと願うのであれば、最終的にこの【自爆】というルート以外の選択肢は他に無いんだ。
辛い旅路になるだろう。
でも、自分の足で一歩一歩前に進むことによって僕らの中に「バウンダリー(境界線)」というものが少しずつ出来上がっていくのだから、どうしてもここを避けて通るわけにはいかない。
道は険しく、長い。
それでも黙って歩き続けていれば、やがて目の前の世界は再びその輝きを取り戻してくる。
以前とはまた違う角度から世界を眺められるようになる。
世界の素晴らしさにあっと驚かされ、そして感動にうち震える日だっていつか必ずやって来る。
せめてそれくらいのご褒美は許されていいよね。
さんざんな目に遭いながらも、多少は賢くなって無事に生還できたのだから。
Psychopath Free (Expanded Edition): Recovering from Emotionally Abusive Relationships With Narcissists, Sociopaths, and Other Toxic People
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