2019年3月13日水曜日

暗闇、そして新たな痛み

サイコパスという嵐が過ぎ去った。
しばらくの間は、人生もぱたりと動きを止めてしまったかのように感じられるだろう。


残されたエネルギーを必死に振り絞り、徹底的にリサーチ。
「やっぱりあの人、サイコパスで間違いない」との確信に至った。
それと同時に、壊れた自分の修復作業にも取り組まねばならなかった。
一体いつになったら周囲の世界が再び息を吹き返すのだろう。
少なくとも、本来のあなたらしさが戻ってくるまでは、そのような日が訪れることなど無さそうだ。


とはいえ、人生が一瞬でもその歩みを止めるなどということは、現実世界にいる限りまずあり得ない。
生きていれば誰だって辛い目に遭うし、嫌なことも起こる。
友達や家族の死は容赦なく訪れるし、人間関係も壊れる時は壊れる。
可愛がっているペットの死や、病の苦しみだって決して他人事ではない。


人生に苦しみや痛みはつきものだ。
誰が何と言おうと、この普遍的真理からは逃れられない。


ただ、サイコパスとの体験を経た後では、苦しみや痛みに対しての反応が以前とは違ったものとなるかもしれない。
辛いことや不快なことが起こると、心がすぐさまブーメランのようにあの頃の記憶へと舞い戻る...。
このパターン、一度はまるとなかなか抜け出せないんだよね。


ぼやきたくなる気持ち、わからなくもないよ。

「あんなサイコパスに出会ってさえいなければ、もっと上手に乗り切れているはずなのに。」

うーん。
それはどうかな。
この、過去へ過去へと舞い戻るブーメランパターン、長引かせることでかえって自分をみじめな立場へと追いやってはいないだろうか。
気に食わない出来事は何もかも一緒くたにし、「あのサイコパスと関わったせいで!」と強引に関連付けてはいないだろうか。


いい?
かつてのサイコパス体験と、今あなたが置かれている状況とは全く別個のものとして考えなければいけないよ。
両者の間には何一つ接点など無いんだ。
人間関係がこじれてくるとこうした記憶のブーメラン現象が特に起こりやすくなるから、気を付けなくちゃね。


あなたの前に気になる人が現れ、いい感じになってきた、としよう。
希望や喜びいっぱいの日々に、あとほんの少しで手が届きそう。
これでようやくサイコパスとの悪夢とおさらばできるかも...。


二人の仲は順調に進展しているかのように見えていた。
だが、あなたの期待もむなしく、相手との間には少しずつすきま風が吹き始める。

「ふん、あんなサイコパスと関わり合いになっていなかったら、きっと今頃は...」

思わず口をついて出るのは、あいつへの恨み節ばかり。


結局、その相手との関係がそれ以上に進むことはなかった。
別れが決定的となり、あなたはまたもや無力感に襲われ、ひどく落ち込む。
サイコパスのせいであなたらしさがじわじわとむしばまれていった、あの悪夢のような時期が再びやって来たようだ。

過去記事:「むしばまれていく、自分らしさ(1)」https://sayonara-psychopath.blogspot.com/2015/03/1.html 】

サイコパスの破壊力を侮ってはいけない。
離れてからもう随分経つというのに、あなたの心の奥深いとこでしぶとく生き続けていたんだね。


僕としては、こうした状況下であなたを襲う無力感と、例のサイコパスとの体験とは切り離して扱うべきだ、と考えている。


あの体験をきっかけに、あなたの魂は生まれ変わった。
これは疑いようもない事実だ。
生まれ変わってからのあなたは、外部からの悲しみに対しての敏感さが以前と比べて格段にアップした。
だが、それは裏を返せば、ほんのわずかな悲しみに触れただけで激しく動揺し、簡単には落ち着きを取り戻せない、ということをも意味する。


「一体どうしたんだろう、私。情けない...。」
そう思う人もいるだろうね。
弱気で、めそめそばかりしている自分の姿に「なんて不甲斐ないんだろう」とイラつくこともあるかもしれない。
本当ならばもっと強く、もっとたくましい自分へと変わっていかなくっちゃいけない時期なのに...ね。


だけど、こうしたネガティブな感情エネルギーは決して無視してはならないし、押し殺してもいけない。
そのままじっくり観察していけば、実はその中にもっと大きな、もっと大切な目的が隠されていることがわかるんだ。

Image by Alexas_Fotos

過去にさかのぼってわざわざ嫌な記憶を掘り返し、脳内ドラマをリピート再生し、嫌な気分にどっぷり浸る。
これ、そろそろ止めてもいいんじゃないかな。
自分を解き放ってやりなよ。自由の身にしてやりなよ。
泣きたいのなら、大声出して好きなだけ泣けばいいさ。
愛のエネルギーは心の一番奥深い場所で封印せずに、外の世界へとどんどん出してやろうじゃないか。
癒えていない傷があるのなら、その愛のエネルギーを使ってきちんと治そう。
失われた物たちや人々に執着するのも止めようよ。
ほんの少しだけ振り返り、「さよなら」とそっと心の中でつぶやいたら、後は前だけ見て歩いて行こう。


身体はへとへと。でも、心は穏やか。
そんな今の自分に気付けているかな。
自分というちっぽけな枠組みを超え、もっと深いところに存在している「何か」と自分とが繋がっているような、そんな感じ。
少しずつではあるが、あなたの中にもそうした実感が芽生えつつあるのではないだろうか。


こうしたプロセスを経る前と経た後とでは、「喪の悲しみ」に向き合う姿勢がガラリと変わってくるのは当然だろう。
変化すること・イコール・悪化すること、と決めてかかるのはよそうね。
世の中には変化して良くなることもたくさんあるのだから。


もちろん、最初のうちは多少の居心地の悪さを覚悟しなければならない。
今までに体験したことのないようなパワフルな感情が押し寄せて来るのだからね。
こんな波、どうやって乗りこなせばいいんだろう。
コツをつかむまではなかなかしんどいと思うよ。


経験したこともない感情をさあ、扱え、といきなり言われたところで、すぐには上手くできないだろう。
難しそう、無理だ、と思った瞬間、つい昔馴染みの例の感情...「この先最悪の事態が襲ってくるんじゃないか」という恐怖心...の方へと心が自然に傾いていく。
そうなると「あのサイコパスさえいなけりゃ...」というネガティブ思考に絡め取られてしまうんだよね。


辛い感情・厄介な感情は、実地経験を積むにつれて少しずつ上手に扱えるようになるよ。
苦手意識も徐々に薄らいでいくだろう。
どんな感情であれ、湧き起こって来たものはとにかく一旦自分の中で受け止めてみよう。
しっかりと受け止められたら、より健全な目的に役立てられるよう、進行方向を微調整してやる。
準備が出来たら、自分の外へパーッと放出してやればいいさ。


大丈夫。
できるよ、あなたなら。



もう一つ、落ち込んだ時にぜひ思い出してもらいたいことがある。


こうした一連のサイコパス体験を生き抜いた今、「前よりも苦手になった」「以前はできたけど、あれ以来できなくなった」といったネガティブな面に目を向けがちなのは仕方ないと思う。

でも、逆に

「前と比べて簡単にできるようになった」
「以前よりもかえって得意になった」
「改善された」

など、あなたにとってプラスとなったことも探せば必ずあるはずなんだよね。
さぁ、いくつ数えられるかな。


サバイバーの多くがこんなところを挙げている。

・友人との仲が一層深まった 
・風通しの良い健全な人間関係だけが残った 
・自分の良いところを認められるようになった 
・他人と自分との間に境界線(バウンダリー)を引けるようになった 
・自分と人類全体とのゆるやかなつながりを実感できるようになった


ネガティブ感情やネガティブ思考って、坂道を転がり落ちていく雪玉みたいなものだよね。
はじめはごく小さかったはずなのに、ころころと斜面を転がっていくうちにその大きさを増し、気が付いたらもう誰にも止められないほどに巨大化している。


ネガティブ要素を無駄に肥大化させないためにも、時々は立ち止まる機会を設けよう。
自分がどれだけ成長したかをはっきりと認められれば、考え方も変わると思うよ。
焼け野原の灰の中から力強く立ち上がり、無事にここまで歩いて来れたんだよね?
本当によく頑張ってきたあなた自身を、精一杯ほめて、そしてねぎらってあげて欲しいんだ。


あなたは暗黒状態からの脱出に見事成功した。
もう怖がらなくてもいいんだよ。


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