サイコパスは、あなたを切り捨てた。
そして、驚くべき速さでもってギアを切り替え、前々からあなたの後任にと用意していた新ターゲットの元へと走り去った。
不貞行為、そして嘘の数々。
あなたの上に、奴からの更なる試練が降りかかる。
あいつと別の誰かが「完璧な」新生活を始める様子を、最前列に座らされたあなたの目の前でたっぷりと見せつけられる、という試練が。
「あの人、私の時と比べて、今度の彼女/彼氏には随分と優しくしているみたい...」
そう思ったのはあなただけじゃない。
サバイバーの十中八九は、別れた相手に対してこんなな印象を抱いたそうだ。
まぁ、見てるがいいさ。今はまだチヤホヤされている新ターゲットだって、そのうち必ずや同じ目に遭うはずだから。
サイコパスは、あなたに印象付けたくってたまらないんだよ。
今度の交際相手がいかに完璧かを、おとぎ話のように素晴らしい人かってことをこれでもか、これでもか、と見せつけてくる。
相手の夢や、好き嫌いといった情報についても既にチェックしている模様。
今は、二人して全世界に向かい、「この人が今度のお相手だよ!」と自慢たっぷりに拡散せずにはいられない、といった感じである。
あなたがお払い箱にされて数日も経たぬうちに後任決定、という事にも、後ろめたさや良心の痛みなど、これっぽっちも感じていないようである。
あなたの心を壊して逃げたあいつが、新しい彼女/彼氏の手を取って、夕陽の彼方へと消えていく。めでたしめでたし。
そんな光景を見せつけられたら、あなただって
「もしかしたら、あの人の中にも『人を愛する』という感情はあったのかも」
と戸惑ってしまうかもしれない。
だけどね、それは違うよ。
どうか勘違いしないで欲しい。
サイコパスな奴には、ハッピーエンドなんて訪れたりしないんだ。
絶対に。
最新バージョンの犠牲者を伴って世界にお披露目パレード。
一応、することはするよね。
でも、それは嫉妬心とドロドロ展開とを煽り立てるための手段に過ぎない。
わざわざそういう卑劣な振る舞いに出るような奴だよ。
別れてからの短い期間で、奇跡の如く「良心」が芽生えた、なんて話、信じられるわけがないじゃないか。
そんなこと、間違っても起こるわけがない。
新しい相手との進展具合を見ていくうちに、「理想化」のプロセスが着々と進行中、ということにはあなたも至る所で気が付くだろう。
「私だってあの人にもっとこうして欲しかった。でも、それが叶うことは無かった」と、かつて夢見ていた事が、今、あの二人の間で実際に怒りつつある。
そこまで見せつけられてはたまらない。
恐らく、奴が新パートナーの家に転がり込む、という流れになるかもしれない。
あなたとの同棲話にはさんざん渋い顔をしていたのにね。
あるいは、大急ぎでゴールイン、ということだってあり得る。
あなたがいくら尋ねても、結婚の二文字からは逃げてばかりいたくせに。
また、Facebook上のツーショット写真投稿がすごい数に上っているかもしれない。
まるで「日陰者」のように地味に扱われていたあなた。それに引き換え、今付き合っている相手は格段に良い待遇を受けている。
「要するに、二人が主役のファンタジーの途中に時々顔出しては邪魔をした、スピードバンプのような存在に過ぎなかったのか、私って...」
そう気付いたあなた。
愕然として立ち尽くすしかない。
だけど、ここで僕は一つ言わなければならない。
あなたにとっては耳をふさぎたくなるような内容だろうけど。
「あなただって、奴と付き合い始めた頃には、他の誰かにこれと同じような思いをさせていたんだよ。」
理想化、と一口に言っても、やり方はその人その人によって変わってくる。
それだけに、「あっちの人の方が私よりもいい物もらってるじゃないの。ずるい~!」と、つい感じてしまうのは止むを得ないだろう。
しかも、今のあなたはどん底状態。対する新ターゲットは幸せの絶頂にある。
相手に抱く「こんなのフェアじゃない」というムシャクシャが治まらないのはもっともだよね。
確かに、今度の彼女/彼氏が「特別な」待遇を受けている、というのは事実だ。
だからと言って、あなたの方が劣っている、というわけではないからね。
相手からの虐待を受けていた時期、もしくはあなたが「おかしくなっていた」とされた時期に、対処の仕方を誤った、というわけでもない。
たとえあなたの言動に全く非の打ちどころが無く、パーフェクトだったとしても、どのみちサイコパスは何か適当に理由を見つけてあなたを捨て、別の相手へと走っていたんじゃないかな。
この目的をまとめると、以下の2点に絞られる。
(1)新ターゲットを調教し、注目と関心とを確実にサイコパスに供給してくれるような人材にするべく、仕込み作業を済ませること。
(2)あなたの中の嫉妬心をかき立てること。と同時に「自分には価値なんて無い」とあなたに思い込ませること。
あなたに与えた以上の愛を別の人物に惜しみなく注ぐ様子を見せつけることで、これが達成可能となる。
だからこそ、
「ノー・コンタクト(No Contact)」
別れた相手とは二度と接触しない、という原則が重要となってくるのだ。
あなたを捨てた相手が、別の人とは交際順調。
そんなもの、いちいち見ない方がいい。
さもないと、不毛な疑問や、自分を疑う気持ちばかりが膨れ上がって、あなた自身の苦しさが増すだけだから。
彼らの姿を目にする度に、「見なきゃよかった」と悔やむ。
「どうして私の時よりも長続きしてるんだろう」
...あなたとの付き合いではさほど我慢強くなかったあいつなのに、どうして今度の相手とはここまで長く持っているんだろう?...
つい、自問せずにはいられない。
考えたところで、答なんて出やしないのに。
相手の態度が悪化し、虐待レベルに落ちた時に表面化した三角関係の影響で、あなたは常に自分と誰かを比べずにはいられない。
最後に残ったのは、あなたは選ばれなかった、という事実。
この事実が消えない限り、あなたは劣等感、そして至らなかった自分への不甲斐なさをいつまでもズルズルと引きずり続けることになる。
あいつら二人の仲が暗礁に乗り上げるのを見届けたい、ひどい目に遭うのを見たい...
そんな期待、まさか抱いちゃいないだろうね?
止めなよ。
そんなの、時間の無駄だ。
見届けたところで、何一つ変わりはしないから。
好奇心が満たされるのはほんの最初だけ。
でも、その後であなたの中の嫌な感情がきれいさっぱり消えてなくなると思ったら、大間違いだ。
あなたの自己価値が、自分以外の誰かが下す評価に100%依存している。
この現状を変えない限り、どこまで行っても心の中の重苦しさは無くならないよ。
Psychopath Free (Expanded Edition): Recovering from Emotionally Abusive Relationships With Narcissists, Sociopaths, and Other Toxic People
posted with amazlet at 18.02.26
Berkley (2015-09-01)