2018年2月2日金曜日

【コラム】破壊

いきなり相手から突き付けられた別れ話。


サイコパスに目をつけられて、ターゲットにされたあなたにとっても、さすがにこれは想定外だった。
だが、奴にしてみれば、これまで時間をかけて綿密に練り上げてきた計画を粛々と実行しただけのこと。


ここに至るまでの間、奴はあなたについての嘘や悪い噂をあちこちに撒き散らしてきた。
「彼女/彼の情緒不安定さには本当にうんざりしてるんだ、だから最近うまく行ってなくって」といった周囲への根回しもさりげなく、目立たぬように行っていた。
おそらく、現在仕込み段階真っ只中にある次の犠牲者にも、あなたに関する悪口がたんまりと吹き込まれているはずだ。


そもそも、先に浮気に走ったのはあいつの方である。
なのに、友人たちと来たら、【実は、奴こそが真のクロ】という事実に全くもって盲目らしい。どうやらうまく丸め込まれてしまったようだ。


遂に「別れたい」との最終通告が届いた。
あなたは「用済み」認定されたのだ。
ものの数日も経たぬ間に、全てが終わった。


新しい相手と「これ以上望めないってほどの完璧な」毎日を過ごすあいつの姿を見せつけられ、あなたはもがき苦しむ。
傷口に塩を塗り込まれるようだ。
何とかして元のような二人に戻りたい、直せるところは直したい。そう思い、一人で必死に努力してきたのに。
まさかその裏で、あいつが別の相手に心を移し、既に親密な間柄にまで発展させていたなんて...。


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あのような連中に常人並みの反応なんて期待しちゃいけない。
頭ではわかっている。
だけど、あなたにずっと気を持たせておき、最後の最後で絶望のどん底へと突き落とすなんて。
いくらなんでもひどすぎやしないだろうか。


しかも、自分があれだけ非情なことをやりながら、あなたのことは「キチガイ」「嫉妬の鬼」と口汚くけなしまくっているのだ。
あなたの悪口を嬉々として周囲に触れ回り、新しい相手と手に手を取り合って、意気揚々とあなたの元から去って行ったなんて。
あんまりだ。


サイコパスは、普通の人々みたいに、きれいさっぱりと、後腐れ無く別れることができない。
奴は、あなたが自滅する様子を見てみたい、との願いを抱いている。
身体も、感情も、魂も、メタメタになってひとりでに崩壊していくあなたの姿をとくと見物してみたい、との望みを持っている。


愛が壊れた時ですら、娯楽として利用しないのはもったいない、と考えるような連中なんだよ。あいつらは。




【参考資料】
「自分はだまされていた、利用されていた、おだてられて操作されていた、そんなことがわかった時、能動的な人と受け身の人では反応が違ってくる。
 
もちろん、どちらも相手を憎らしいと思うし、くやしいと思う。しかし、憎らしさにとりつかれてしまうのは、受け身の人である。 
能動的な人は、憎らしい、くやしいという気持ちになるよりも、あの人たちとのつきあいはもう"嫌"だという気持ちになる。 
能動的積極的な人は、相手の正体がわかった時、その人と無関係になろうとする。  
自分が恋していた男はこんな男だったのか、自分が尊敬していた親はこんな人間だったのか、自分が信じていた友人はこんな人間だったのか、そうわかった時、とにかく無関係になろうとする。
自分はだまされていた...そうわかった時が、天国と地獄の分かれ道なのである。」
(...)
「だが、考えてみれば、恋人や親のいうことを信じてしまったのは、彼らに対して依存心があったからである。 
そして、その人間への依存心を克服できないでいるから、憎しみにとらわれて、一生を復讐に費やしてしまうのだ。
それこそ、残りの人生まで、そんなくだらない人間にメチャメチャにされてしまうのである。
 
その人が温かそうな声を出していたのを、温かいと信じていたのは、自分に依存心があったからである。 
自分に自律性が備わっていれば、その温かい"ふり"をしたそぶりや声の調子に、冷酷なものを感じて、"ゾッ"としたはずである。

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「(...)能動性が身についていればいるほど、こらえきれないくやしさからの復讐ではなく、相手とは無関係の道を選ぶのではなかろうか。 
なぜなら、能動的であればあるほど、相手の汚さに耐えられないからである。 
(「自分を嫌うな」加藤諦三、三笠書房、1984、pp. 170-173、太字強調は引用者による。)

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