2018年4月29日日曜日

皮肉【後編】

3.あなたが幸せすぎた

サイコパスな奴らと来たら、【理想化段階】の時はパートナーをさんざん持ち上げて有頂天にさせるくせに、そのパートナーがいざ自分の方に幸せや愛情を向けるやいなや、打って変わって相手を恨むようになるのだという。


何だろうね、これ。
わけがわからない。


この恨みの感情はやがて【受動攻撃的な虐待】へと変換されて、以後、サイコパスの内側でくすぶり続ける。
奴はあなたの正気を失わせ、不安のどん底へと突き落としたくって、その時を狙っているんだ。
あなたの自信は、サイコパスの調子良い言葉でもってたちまちハイな状態へと持ち上げられた。
だけど、その自信に一撃を与え、粉々にしたのもまたサイコパス、っていうんだからね。全くおかしな話だ。


ただ、サイコパスは、ここでもうっかりと漏らしてしまっているよ。
「こいつにはかなわない」という、あなたに対してひそかに抱いていた敬意を。


元々、あなたの中には

幸せ
喜び
といった素晴らしい部分がある。
しかも、息をして、ちゃんと生きている。
あいつがそれに気付いた時点で、「こいつを嫌うしかない」との結論に至ってしまったんだろう。
いずれも、奴の人生においては縁の無い性質ばかりだ。
持ってたところで意味無いさ、無駄だよ、とまで決めつけている。生まれてこの方、一度だって体験したことが無いから、そう思うしかないんだね。


だから、微笑みを浮かべ、楽しそうに笑うあなたの姿も、奴にしてみれば「おかしい」としか映らない。
「魂の抜け殻」よりは「人間らしくある」方が優れているのは言うまでもないが、そのごく当たり前の事実をいちいちあなたから突き付けられるような気がして、しゃくに触って仕方がないんだろうね。


いや、そんなことがあってなるものか。自分は間違ってない...。
何とかそれを証明したくって、奴はあなたの良い部分を嘲笑し、貶めるためだけに打ってつけの舞台を準備した。
そしてグランド・フィナーレの幕が切って落とされる。





4.あなたの感情に付き合いきれなくなった

サイコパスにとって一番面白いのは「理想化段階」。
まだ、何もかもが「完璧」でいられる時期だからね。
問題も無く、順風満帆。
厄介な感情の泥沼に巻き込まれることも、まず無い。


ところが、こうした連中は自分から人をたぶらかしては恋に落ちるよう仕向けておきながら、いざ付き合い開始となると急にそわそわするようになる。
ヤバい。こいつ、どうやら本気らしい。
もっともっと二人の距離を縮めたがっている...。
サイコパスは突然気付き、はたと立ち止まってしまった。


あっという間に熱が冷めていく。
そうなると、相手との時間が苦痛でしかなくなる。


このような場合の「グランド・フィナーレ」では、「頭おかしい、躁鬱入ってる、ヒステリー性格だ」と被害者だけが一方的になじられる、との道筋をたどることが多い。
ただし、これも先に挙げた例と同じで「うわっ、君にはちゃんと心があるのか!」と、あいつがあなたを自分より格上の存在と見ていることのあらわれなんだよ。
まぁ、その表現方法がいかにも奴らしいと言えば奴らしい、のだが。


「理解不能なもの」が目の前に立ちはだかる。
サイコパスな連中にとって、これほど腹立たしいものは無い。
だからあなたのことも「ぶっ壊して」やりたくなったんだよね。


奴にとっての完璧なパートナーになろうと、あなたは自分の感情を必死に抑えつけ、涙ぐましい努力を重ねていたよね。
あの時だって、あなたには何の落ち度も無かった。
「普通の人」としてはもう充分過ぎるってぐらい、よく頑張っていたよね。


感情があるから、僕らは人間でいられるんだ。
なのに、サイコパスの連中と来たら、この、人間を人間たらしめている特質にうんざりしている、のだという。
あり得ない。


だから、サイコパスの目から見た「良いもの」と、あなたから見た「良いもの」とは、真っ向からぶつかり合って当然だ。
何らかの行動を起こした時、サイコパスがあなたを非難した、ということ、今までに無かっただろうか。
ここからも一つ読めることがある。
あなたが大切に守ってきた価値観こそが、実は「正しく、良いものであった」ということだ。


確かにわかりにくいよね。
奴のこじ付けに翻弄されてしまうのも無理は無い。
でも、あなたは決しておかしくなんてなかった。
奴はただ、あなたを疑心暗鬼の状態へと突き落としたかっただけだ。
「私には良いところなんて何も無い」と、とことん自信を喪失してしまうレベルにまで、あなたを引きずり落としたかった。


今、こうして過去を振り返ってみて、うすうすわかってきたのではないだろうか。
...ああ見えても、奴はあなたの強さに「かなわないな」と感じていたんだ。
表向きには「虐待」という形を取っていたから、すぐには見抜けなかったけれども。


まぁ、今はまだ、こんなこと聞かされたってしょうがないだろうし、多分聞く気にもなれないだろう。
グランド・フィナーレを迎えてしまった今。
全ての希望は死んだ。
「愉快」という言葉があなたの前から姿を消した。
この先どうなるのだろう。行く手には真っ暗な闇しか見えない。


あなたは満身創痍の身となってしまった。
あいつのせいで。
この先、奴から受けた虐待がどれだけあなたの人生に影響を及ぼしてくるかなんて、実際に何年か生きてみないと全体像は見えて来ないかもしれないね。


では、ページをめくろう。
僕と一緒に、この道を一歩一歩歩いて行こうじゃないか。



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