2018年8月19日日曜日

【コラム】ロボット

「自分らしさ」というものを一切持たない。
だからこそ、サイコパスはいとも簡単に自分のキャラを変えられるし、ターゲットが心にずっとあたためていた「夢のお相手」にすっかりなり切る、という離れ業まで軽々とやってのけるんだ。





奴等が本格的に行動を起こす前には、しばらく「観察」するための時間を取る。
これ、お気付きかな。
「僕たち、似た者同士だね。」
「私たち、すごくよく似てると思わない?」
熱に浮かされたような口調で語り掛けては来なかっただろうか。



サイコパスはこの「観察」期間の間中、あなたが語る内容にじっと耳を傾ける。
希望、そして将来の夢について思う存分あなたに語らせ、自分はひたすら聞き役に徹する。
で、あなたの話をたんまりと聞いたところで、内容を丸ごと頭の中にコピー。
さらに誇張した形へと仕立て直したものを、今度はあなたを前に堂々披露する。


でっち上げられた、フェイクな「絆」ではある。
だけど、いざ目の前にバーン!と提示されると、さすがのあなたも相手の言う事を信用しないわけにはいかなくなる。
そこまで来ると、「とうとう見つけた。この人こそ、完璧なソウルメイトに違いない!」との確信へと至るのなんて、あっという間だ。



奴は、あなたのやることなすこと全てにべた惚れしているように見せかけている。
数分おきに直接メッセージを送ってくるだけでなく、あなたのFacebookページにちょくちょく顔を出しては投稿を残す、と、芸が細かい。
そうすればあなたの友人達にも見てもらえるだろうから、と、奴は言う。



ふと気が付くと、あなたの生活の大部分がこの一人の人物に侵食されていた。
「あの人のいない人生なんて、もう想像すらできない。もしあの人を失ってしまったら、私は決して幸せになんかなれない!」



そこで新たに登場するのが、三角関係。
捕食者(プレデター)には「自分らしさというものが無い」と上で書いたけど、その事実が最もくっきりと浮かび上がるのはこの三角関係の時期なんだ。



あれほどボロクソにけなしていた昔の交際相手。
はたまた、今後釣れそうな見込みのある候補者たち。
手あたり次第に声を掛けまくっては、曖昧なほのめかしや内輪ウケのジョークを連発し、自分の側に手繰り寄せようとしている。
しかも、そうしたやり取り全てがあなたの目に触れるようにと、巧妙な計算までしてるんだよね。憎たらしいったらありゃしない。



「...何だか探偵みたいな事ばかりやってるな、私」
そう思えたとしても仕方が無いよね。
これが普通の探偵業と大きく異なるのは、サイコパスが絡む三角関係の場合、あなたの意思や希望など一切お構い無しに余計な情報やヒントが向こうから勝手にやって来る、ということだろう。


あれやこれやと色々ほのめかされ、あなたの中ではだんだんと嫉妬の炎が燃え上がる。今にも気がおかしくなりそうだ。
一体何の因果で、あの人が大っぴらに他のターゲットを褒めちぎる様子まで見せつけられなきゃいけないんだろう?
あの人は、まがりなりにも、私のソウルメイトなのに...。



だが、ここであなたは世にも奇怪な現象を目にすることとなる。


【サイコパスのペルソナ(表向きの顔)が、 
釣ろうとしている個々のターゲットのキャラに合わせて、 
別人になったかのように激変している...!!!】


前はけなしまくってたはずのアレを、今度は手放しで賞賛、って...
そんなジョーク、おかしくも何ともない。どうしてそこまで爆笑するの...
そもそも、こんな人だったっけ?あまりにも性格が変わり過ぎていて、もはや完全に別人としか思えない...



「あなた、変わったわね」
相手にこんな指摘でもしようものなら、たちまちあなたは「キチガイ」「神経質過ぎる」と、異常者の烙印を押されるに違いない。


だが、あなたにとって何よりも腹立たしいのは


【奴は、あなたという人物からいろいろな要素を盗み取ってきて、 
次のターゲットを仕込む際の役作りに利用するつもりでいた


という事実だろう。



ああいう連中はね、そこそこ出来の良いロボットみたいなものさ。
ターゲット経験値が上がればそれなりに進化もするし、バージョンアップだってする。
だけど、ロボットは所詮ロボットでしかない。
うまく機能する部分があったとしても、それは他からの借り物。
とことん使い倒してしまった部分については、ポイ捨てするより他にどうすることもできないのだ。


2018年8月7日火曜日

喪失の段階---Part 2 ①サイコパスとは何かを理解する

ジグソーパズルの欠けピースは見つかった。
全てを台無しにした例の言葉、すなわち【サイコパシー(精神病質)】。ようやく探し当てることができた。
後は、全てが収まるべき場所にきれいに収まっていくことだろう。


突然、何の前触れも無くあなたの前に現れた【サイコパシー】という単語。
これが糸口となって、自分の身に降りかかった災厄全てが説明できそうだ。
今までずっと理解不能だった問題にも、難なく答えが出せそうだ。


ただ、言葉で説明できたとしても、まだまだ気は抜けない。
この先、得体の知れない、今まで経験したこともないような感情が新たに噴出してくることも予想される。
最初のうちは気持ち悪いと思うだろうね。不快な体験から脱出し、回復へ向かう時には、どうしてもそういった違和感がついて回るものだ。


自問自答をする機会もぐんと増えるだろう。
だけど、それは良いことだ。順調に回復へと向かっているしるしだ。


自分(と、自分の周りの世界)に対して疑問を持つ。
自己省察という長い長い旅に出ようと思ったら、これをやらない限り、はじめの一歩を踏み出すことすらできないからね。
無事全行程を歩き切ることができた時、あなたは以前とは似ても似つかぬ、全く別の人間へと生まれ変わっているはずだ。
そして、新たな人間として新しい人生を生きていくことだろう。





サイコパスとは何かを理解する


症状:身体的な不調、自分が間違っていないことを他人に証言してもらいたがる、ショック状態、嫌悪感、「そうだったのか!」という発見、被害妄想、胸の辺りが沈み込むような重い


回復へと向かう旅の途上で、居心地の悪さという点でも、そして重要さという点でもトップクラスに位置するのがこの段階である。



結局どれだけ知識を頭に詰め込んだところで、所詮知識は知識でしかない。いずれ限界が来る。
サイコパス(精神病質)を真に理解しようと思ったら、あいつらがどんな風に物事を感じているのかを、身をもって体験してみなければならない。


被害者の多くは、「思いやり」「愛」を大切にする人々だ。
それだけに、サイコパスに「共感」する自分の姿なんてとても想像できない、と皆、口を揃えて言うだろう。


だけどね。
実は、共感力豊かな人達があいつらに食い物にされるのは、まさにこれが理由なんだよ。
普通の人は、良心を持たぬ人なんているわけがない、良心は誰にでも備わっているはず、って、つい思いがちだよね。
サイコパスのターゲットにされる人々は、特に深く考えもせず、脊髄反射的に「良心は誰だって持っているに決まっている!」という自らの信念を目の前の相手の上にまるごと投影してしまうんだ。





サイコパス研究が進めば進むほど、ついつい我を忘れて没頭してしまう、というのもよくあることだ。あまりにもサイコパスの世界にどっぷりとはまってしまい、あなた自身が自然とサイコパスの思考パターンを体得してしまった、ということは決して珍しい話ではない。


これ以上先へ行ったら本当にまずいぞ、といった危険信号。
言葉による虐待。
思い返せば、確かにあった。
そういえば、あなたを破壊しにかかったきたあの時も、あいつはサディスティックな快感に浸っていたではないか。
「お願いだから許して」と泣きすがったあなたに対し、奴がぶつけてきたのは沈黙。時には笑い声までも。
忘れようとしたって、忘れられない。


あいつの場合、単に大雑把だとか察しが悪いとかで済まされるような次元の話ではなかったのだ。
二人の関係を思い出し、あいつの立ち居振る舞い、交わした言葉を全く違った角度から眺めてみた結果...


ああ、そうだったのか。
何もかもが腑に落ちた。これで全てに説明がつく。
以前は、どれほど頭をひねって考えてみても、一向に答えが出せなかったというのに。


最初はあなたの言う事なす事、オウム返し的に真似するところから。
で、お次は愛情爆弾の集中投下。
やがてあなたらしさがじわじわと蝕まれ、三角関係へと巻き込まれ、挙句の果てには無慈悲にポイと捨てられた。
腹が立ったなんてもんじゃなかっただろう?


結局、あいつはあなたに対し、ただの一度すらも愛情を抱いたことなど無かったのだ。
...連綿と続く、大勢のターゲットのうちの一人、としか見ていなかった。


そして、新たな事実も浮かび上がる。
あいつと付き合っている間、あなたは他の人相手の時には全く考えられないような、大それたことも平気でしていたよね。


そこまでしたのは、何もあいつが「特別な人」だったからじゃない。
あいつはね、常にあなたを苦しい立場に追い込み続けていたんだよ。
あいつがあなたを釣り上げた瞬間から最後まで、ずっと。


「私、被害妄想がひどすぎるんじゃないか...?」と気に病んだ時もたくさんあったね。
でも、当時のことを思い返してごらんよ。何ということはない、全ては虐待と無視が引き起こした当然の反応に過ぎない、と今ならわかる。
何もかもが計算ずくの、意図的になされたことばかりであった。


だけど、そうした発見の数々だって、一番最後に訪れたそれに比べれば別にどうってことはない。


【...よりによって、全身全霊で愛してきた人物、心のありったけを傾けて信頼してきた人物が、出会った瞬間からずっと、あなたのことをめちゃくちゃに壊そうとしていた...。】


さすがのあなたも、これに気付いた時は全身の血も凍るような衝撃を覚えたのではなかろうか。




2018年8月2日木曜日

脱洗脳③

~認知的不協和をストップできた私。一体何が効いたのか?~

正直に言うと、【ノーコンタクト】に入ってから6週間ほどの間は、「しんどい」どころの話じゃなかった。
精神が二つに引き裂かれ、片方があっちに、もう片方がこっちに、といった具合に引っ張られる綱引き合戦がひっきりなしに行われていたようなものだったから。


だけど、そこで気を取り直してサイコパス、ナルシシスト(自己愛)、ソシオパスに関する資料を読むことに集中してみた。
そうするうちに、認知的不協和も徐々に減り、ついにはすっかり消えて無くなったんだよね。
多分、私のはらわたの奥深い場所、つまり本能の部分では、がっちりと真実をとらえられていたんだろう。
だからこそ、【違う、私はおかしくない。あいつこそが真のサイコパスだ!】との声がずっと止まなかったのだと思う。


読んだ資料はどれもこれも真実を告げるものばかり。
書かれた言葉の一つ一つが魂の奥底にまで響き、そして深いところにまで沁み込んでいった。
まだ頭の中は混乱していたけれど、その内容に上書きしたり、はたまた上から覆い隠したり、といった小細工はもうやれないな、と思った。

暗闇にパッと灯がともるような、新しい発見の瞬間。
当時の私には、そのような体験(「アハ!体験」とも言えるだろうが)が絶対的に不足していた。
だから、一つでも二つでも多くの灯りを自分でともして、はっきりと物が見えるようにしなければならなかった。


ようやく分かり始めた。
私はあいつに「洗脳」されていたのだ。
認めるのは辛かった。でも、少しずつ現実を直視できるようになってきた。


実は、身体の奥深く、はらわたの辺りから「ストップ!」の声が聞こえたのは、これが最初ではなかった。
記憶のはるか彼方に行ってしまっていたけれど、少しずつ後から思い出してきた。
あれは確か、あいつと付き合い始めて2、3週間経った頃のことじゃなかったかな。


取りあえず、脳から来る雑音は黙らせておく方がいい、と気付いた。
あの厄介な脳内綱引き合戦、つまり認知的不協和が再び始まると、脳味噌もごちゃごちゃと余計なことを横からまくしたてるようになるものだ。
この難局を乗り切りたければ、脳味噌にも少し黙っていてもらわないと。



そこで、私は新しい試みを始めた。
脳内の雑音があまりにも耐え難くなり、「黙れっ!」と一喝したくなったら、すぐさまサイコパス/精神病質者の行動に関する情報・資料を手に取るようにするのだ。
そして、ガンガン読み進めていく。
この新習慣を自分に課した。



本当に癒され、真実をより確実に理解したいと願うなら、まずは脳内にさまざまな疑問が忙しく飛び交っている時間を極力減らさないといけない。
疑問に頭を占領されているようでは、勝ち目はない。
魂の奥深くから「ああ、その通り...」と納得できるような事実...前回触れた「アハ!体験」のような事実...を疑問の代わりにどんどんインプットしていくこと。
当時の私には何としてもこれが必要だった。


だから、私は【ノーコンタクト】が定着するまでの間は、意識してあいつとの接点を避けた。
思い出の場所には行かない。好きな音楽も聴かない。共通の知人たちも遠ざける。
とにかく、徹底的に接点を減らすようにした。
うっかり接触すると、あいつの事で頭の中があっという間に占領されてしまうかもしれないのだ。
そうなったら全てが水の泡となる。



それに、【犠牲者/サバイバー】となり、命からがらサイコパスから逃れてきた実体験を、下手をすると私自身がわざわざ台無しにしてしまう可能性も、全く無いわけではなかった。
今、あいつと関わる人や物と接触すれば、心がぐらつくのは必至だ。
そうなると、自分を言いくるめ、本当の気持ちをごまかし、過去全否定だってやってしまうかもしれない...。まだまだ危なっかしい自分だったから、気を抜くわけにはいかなかった。
とにかく、あいつとは一切の関わり合いを持たないに越したことは無いのだ。


以上のような手順を踏んで、私は【ノーコンタクト】の状態を無事に守り通すことができた。
そして、認知的不協和に煽られ、やたらとうるさく叫び声を上げていた頭の中の厄介者・「疑心暗鬼」も、今では打って変わっておとなしくなった。
以前だったら、倒しても倒してもしぶとく立ち上がり、これでもか、これでもか、としつこく私を挑発してきた疑心暗鬼。最近ではすっかり無口になった。


いい?
ここからは、しっかり読んでね。


確かに、回復というゴールへと向かう旅路は長く、厳しいものとなるに違いない。
時には、頭の中に疑問が生じてどうにも止めようがない、しかも一つ疑問が解決するやいなや、その答えがまた別の疑問を呼び寄せてくる。脳内問答が永遠に終わらない...。
そんなややこしい時期だって一度や二度は体験することになるだろう。


いくら頭の中で状況分析しても、実際は身動き一つすら取れない、なのに脳だけは異常にアクティブに動いているものだから、思わず「うるさい!黙れ!」と自分に怒りをぶつけたくなる。
そうかと思えば、頭でっかちになり過ぎるのもさすがにまずいな、と気付く時もあるだろう。
そして、はらわたから上がってくる声にじっと耳を傾け、その声に従ってみるのもいいかな、と思える時期だって、いつか必ず訪れる。


あなたには次のことだけでも覚えておいて欲しい。


サイコパスがついた嘘を真に受けてしまい、頭の中を疑いばかりで満タンにしていると、回復できそうな心も回復できなくなってしまう。
だって、肝心な「真実」を収容するのに必要な空きスペースが不足した状態で、あなたは一体どうやって嘘を見抜けるというの?
まずは、真実を自分の中にどんどん落とし込んでいかないと。


そうと分かったら、早速汚れた脳味噌のお洗濯を始めよう。
「真実」のシャワーで脳内を洗って、洗って、何度もきれいに洗い直していこうね。


あなたの中にどれだけの真実が収容可能かは、サイコパスから受けた洗脳をどれだけ多く除去できるかどうかで決まってくる。
分かりやすく言うと、こう。

【受け入れた真実の分量が増えれば増えるほど、サイコパスから受けた洗脳が除去されていく。】


だから脳味噌はどんどん真実で洗ってやった方がいいのだ。
脳を洗えば洗うほど、サイコパスがあなたの脳に埋め込んだ高濃度の嘘も少しずつ薄められていき、しまいには跡形もなく消え去っているはずだから。


ある朝、あなたはいつものように目を覚ます。
「あ、もう私は大丈夫。真実がしっかりと脳味噌に浸透したから!」
いつかそんな日は必ずやって来る。
最初にはらわたレベルで受け止めた真実が、ゆっくりと時間をかけてあなたの体内でろ過されて、上昇していき、遂には脳まで辿り着く。
そうなったら、サイコパスの嘘も、真実の力でもって全て駆逐完了となっているはずだよ。
嘘が消滅したことで生じた空きスペースには、真実がしっかりと根を下ろすことだろう。
そして末永くそこに居続けてくれるに違いない。


内なる平和。
とうとうあなたも手に入れた。




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ということで、この章では二人の寄稿者に登場してもらった。
彼女達の文章を読んで、あなたが回復へと向けて旅立つ勇気が湧いて来たなら、僕としても大変うれしい。
数々の有益なアドバイス、ぜひとも参考にして欲しい。


「真実を広めること」。

今、暗闇の真っ只中にいる人にとっては、これこそが最強最上の暗闇脱出法ではなかろうか。
サバイバーにとっての知識は、力としてはたらく。
逆に、サイコパスには、その知識が彼ら自身を傷付ける毒としてはたらく。


だから僕たちサバイバーにとって、情報はいくら多くても多過ぎるということは無いんだ。絶対に。
そうして必要な情報を手に入れ、歯車がきちっとかみ合い、全てが動き始めたら、そこから先はこっちのものさ。
...後はひたすら光に向かって前進あるのみ、だよね。


本書【訳注:英語原書の"Psychopath Free"。下のリンクを参照ください。】の巻末にはさまざまな記事、書籍、動画の情報をまとめておいたので、ぜひそうした資料を大いに活用し、自分の身を守るための知識を仕入れてもらえれば、と思う。
そして、認知的不協和という、われわれにとっての忌々しい敵を、徹底的に叩きのめしてしまおう。