「普通、人間ってこういう時はこう振舞うよね。」
あいつと出会う前にも、既にざっくりとしたあなたならではの人間観はあったと思う。
ところが、その人間観は何一つと言っていいほどあいつに通用しなかった。
交際中のあなたは、思いやりあふれ、明るく前向き、過ちは笑って許すようなパートナーになりたい、と日々涙ぐましい努力を続けていたよね。
でも、そうしたあなたのけなげさですら、あいつは意図的に悪用していった。頑張れば頑張るほど、どんどん墓穴を掘るようにと仕向けたんだ。
まさか愛する人が自分を陥れようとしていただなんて、当時は夢にも思わなかっただろうね。
だって、どう考えたって普通はそんなことあり得ないから。
当時のあなたは、奴という銀幕(スクリーン)の上に、ごく普通の人々にはちゃんとある「良心」を、誤って投影してしまっていたんだね。それも、かなりの長期間にわたって。
だから、相手の理不尽な言動にも「気にしない、気にしない」と自分をごまかし、深追いせずにスルーしてしまった。
だがそれも、あなたがサイコパシー(精神病質)、ソシオパシー(社会病質)、ナルシシズム(自己愛)という概念に出会うまでのこと。
あれ以降、あなたの世界は完全にひっくり返った。
最初に襲ってきたのは激しい嫌悪感だった。
あのような「悪の権化」を、わざわざ好き好んで自分の人生に引き入れてしまったとは...。
衝撃の事実に、身震いが止まらない。
今や全ての辻褄(つじつま)が合う。
何もかもが腑に落ちる。
「たまたまだよ、わざとじゃない」
「別にそこまで考えていなかったけど」
言い訳していた行動の数々にも、実は隠された意図が存在していたのだ。
改めて思い返してみると、それがよくわかる。
そこまで気付けば、当然、友人や家族にもこの大発見を聞かせたくなるよね。
だが、話してみたところで、誰一人として分かってくれる人はいないんだ。
周囲の人々にあなたの話が全く通じない。
こういう時こそ「それ、間違っていないよ」との確証を、第三者的立場の人達からもらうことがきわめて重要となってくるんだ。
似たような体験をした人を是非とも見つけ、彼らと接触して欲しい。
そういう人々に被害体験談を聞いてもらえれば「そうだ、自分は狂ってなんかいない、気は確かだ」って改めて実感できるだろうから。
仲間は必ずいる。
人でなし、という言葉でしか形容できない奴に食いものにされたのは、あなただけじゃないからね。
あいつがさんざん見せつけてくれた人格障害(パーソナリティ障害)という現象と、この先どうやって向き合っていけばいいのだろう。
自分なりの解決策が打ち出せる日までは、時間をかけて取り組まなければならない。
同時に、長年抱いてきた人間観も、思い切って全部捨て去ることになるだろう。
全てをぶち壊し、処分し、更地状態にしたところで、【新しい人間観】という建物のパーツを、一つ一つ下から積み上げていく...。
しばらくは、こうした地道な作業の繰り返しだ。
しばらくは、こうした地道な作業の繰り返しだ。
誰もが「善良な性質」に生まれついているとは限らない。
少しずつ、この現実にも目を開いていかねばならない。
被害妄想気味になることもあるだろう。
警戒心が高まり過ぎることだってあるだろう。
不安に呑み込まれそうなこともあるだろう。
それまでとは違う意識のあり方を模索する一方で、「信じやすいお人よし」だった、かつてのあなたに目配りすることも忘れてはいけない。
新しいあなたと、かつてのあなたとのバランスを上手に取れるようならなきゃね。それには、ひたすら練習あるのみ。
本当の癒しが欲しければ、この課題だけはどうしても避けて通るわけには行かないのだ。
魂をえぐった、深い傷跡
うすうす予想はしていたけれど、相手からの一方的な通告と共に別れはいきなり訪れた。
その後、「鬱状態」とも少し違う、「空っぽさ」としか言いようがない、不気味な感覚がじわじわと押し寄せて来た...。
大勢の被害者が口を揃えて同じようなことを言っている。
まるで、魂が完全にどこかに行ってしまったような、そんな感じだったそうだ。
周りで何がおころうと、誰が来ようと、麻痺した心はもう微動だにしない。
以前なら楽しめたことも、今は「どうでもいい」と無反応なままである。
あの怪物に関わったせいで、自分には共感能力も、感情も、人を思い遣る心も無くなってしまった。もう、全てが破壊されてしまったんじゃないか...
後から後から不安が湧いて来る。
僕の経験では、乗り越えるまでに最も時間がかかるのはこの段階だと思う。
確かに最初は絶望あるのみ。お先真っ暗、といった感じしかしないだろう。
でも、あなたの魂は決してあなたを見放すことなど無いんだよ。いつもあなたの傍にいる。
傷を負ったのは事実だけれど、決して魂は消え失せたりなどしていない。
時が経つにつれて、少しずつ、自分を大切にする心(self-respect)と、他者と自分との間の境界線(boundaries)が自分の中に芽生えてくるはずだ。
そこまで回復が進めば、魂の声だってきっとあなたの元に帰って来ると思うよ。
大丈夫。ちょっとぐらい自分をさらけ出したって、危険はないから。
時々は顔を外に出して「こんにちは」と声を上げるのも悪くはないさ。
「また泣けるようになったなんて。ありがたい」と思える日は来るよ。
「生の感情が戻って来た。うれしい」と言える日だってちゃんと来るよ。
ここまで辿り着けば、もうしめたもの。
感謝の思いや、喜びの瞬間がより頻繁に、より安定したペースであなたの中に湧き起こるようになってくるからね。
あのような体験に押し潰されることなく、何とか生き延びたあなた。
最終的には、大変有用な知恵を手にすることができるだろう。以前の自分だったら「そんなの、絶対無理。考えられない。」と真っ向から反対したようなこの新しい知恵のおかげで、周囲の人々との付き合い方も変わっていくんじゃないかな。
あなたは、更に強く、たくましくなった魂へと生まれ変わっていく。
今後何があろうとも、あのような非人間的な付き合いしかできないような連中には、きっぱりと「NO!」を言えるようになるだろう。
僕たちが人間世界で暮らす限り、毒性の強い人々との接触は避けられない。
若かろうが、年を取ろうが、残念ながらこれだけは常に変わらぬ現実だ。
ただ、彼らをのさばらせて、長居を許すような過ちだけはもう二度と繰り返さない、と決めようじゃないか。
連中が仕掛けてくるマインドゲームや対人操作にいちいち付き合っていられるほど、僕らは暇じゃないのだから。
付き合うなら、親切で、正直で、他人への思いやりを忘れない人に限る。それ以下の人間にわざわざ時間を割いてやる必要などないよ。
ようやく手に入れた、新しい力。
これこそが、サイコパスとの関わりの末に得られた最高の宝物ではなかろうか。
回復のプロセスは辛く、長い道のりとなるだろうが、絶対に取り組むだけの価値はある。
それなりの見返りは必ず得られるはずだ。
旅の途上で得られた力は、あなたにとっての頼もしい武器のようなもの。
これからもずっと、生涯にわたってあなたのことを支えてくれるはずだよ。
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