あれが捏造された恋愛だったことは確かだ。
あなたの人柄がそっくりそのまま真似されて、あなたの夢がもてあそばれていたからね。
それでもあなたはあいつのことが好きだった。
この世界において、恋ほど人の心を激しく揺さぶり、二人の人間を強固に結びつける感情は他に無いだろう。
あの頃のあなたも、恋心で胸がはち切れんばかりだった。
愛する人を失えば、誰だって辛い。
それが、今後の人生をずっと一緒に過ごしていこう、と心に決めていた相手となれば辛さもまたひとしおだ。
でも僕らは、こうした愛の喪失体験から何としてでも自分の魂を立て直していかねばならない。
加虐者のあいつがどれほどの悪だくみを腹の中に隠し持っていようとも、あなたが奴に対して抱いた恋心は正真正銘の本物だった。
あの頃のあなたも、恋心で胸がはち切れんばかりだった。
愛する人を失えば、誰だって辛い。
それが、今後の人生をずっと一緒に過ごしていこう、と心に決めていた相手となれば辛さもまたひとしおだ。
でも僕らは、こうした愛の喪失体験から何としてでも自分の魂を立て直していかねばならない。
加虐者のあいつがどれほどの悪だくみを腹の中に隠し持っていようとも、あなたが奴に対して抱いた恋心は正真正銘の本物だった。
多くの時間、そして未来への希望。
その両方が整ってはじめて、いわゆる失恋後の鬱状態から這い上がって来れるようになるのだと思う。
どうしようもなく、あいつのことが好きだった
ここからは、「普通の破局」とは少々違った道筋をたどることとなる。
絶望と欲望とを捏造することにかけては、サイコパスほどに上手くやれる奴なんてそうそういない。
あなたがこいつと付き合っていた時のことを考えてみよう。
それこそ身を粉にして奴に尽くしてはいなかったかな?他の人にはそこまでやらないんだけど、ってほどにまで。
時間もエネルギーも相手への思いも、それまでの恋愛とは比べ物にならないほど、大量にガンガン注ぎ込んではいなかっただろうか?
なのに、あなたが手に入れたものといえば、生まれてこの方経験したことの無いような、不快で、しんどい、泥沼のような日々だったとは...。
理想化の段階【注①】では、注目、プレゼント、手紙、賞賛などを大盤振る舞いで浴びせかけてきたサイコパス。だが、その頃のあいつがやっていたのは、実は
「寸分たがわぬ正確さであなたを完全に真似て、あなたになりきること」
だった。
やることなすこと、あなたは何もかもが完璧だったからね。
やることなすこと、あなたは何もかもが完璧だったからね。
【注①】
それだけに、まさかこの後に、あなたらしい部分がじわじわとむしばまれていく段階(identity erosion) 【注②】が待ち構えていたとは。
当時すっかり舞い上がってしまっていたあなたには、全く予想もつかなかっただろうね。
【注②】
サイコパスが一言、ぽつりとつぶやく。
すると、あなたはそのつぶやきから「君なんて、今すぐにでも他の人と取り換えたっていいんだよ」といった不穏なニュアンスを嗅ぎ取り、動揺し始める。
様々な思いが交錯する中、心は少しも休まる暇が無い。
昼も夜も、考えることといったら全てあいつのことばかり。
何もかも、奴の狙った通りになった。
嘘。ガスライティング。三角関係。
サイコパスはそうした小道具を巧みに用いて、あなたの毎日をめちゃくちゃにかき乱し、そして予測不可能な状態へと落とし込んでいったはずだ。
あなたの頭の中には、あいつに関すること以外は何一つ入り込む隙間が無い。
これを「どうしようもなく恋に狂っていた」と言わずして、一体どう表現すればよいのだろう。
とても健全な状態とは言えない。
奴への恋にそこまでドップリはまってしまった、っていう事実だけでも、実はあいつがそれだけの愛情になど値しない奴だった、っていうことが浮かび上がってくるんだよね。
「彼(彼女)以外にここまで強く愛せる人なんて、この先の人生に絶対に現れるわけがない」
頭で下した結論をすっかり信じ込んでしまったあなたは、もはや聞く耳など持たない。
そしてあいつはあなたの元を去って行った。
全世界が崩れ落ちていくようだ。
今やあなたは、パニックと絶望が支配する地へと足を踏み入れた。
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