2015年4月2日木曜日

むしばまれていく、自分らしさ【2】

サイコパス人間との付き合いが深まっていくにつれて、あなたの外見をあげつらうような発言が少しずつ増えていく。
頭のてっぺんから足の先に至るまで、この相手、とにかく難癖を付けずにはいられないかのようだ。
「欠点」(あくまでも彼らの見方によると、だが)は欠点。だから、あなたに向かって何を言おうが叩こうが、俺(私)の自由、とでも思っているのだろうか。


自分を大切に扱うことを止めてしまって久しい、あなた。
摂食障害の危険にすら瀕している。相手の気持ちをつなぎとめておきたい、との思いゆえに、がんばり過ぎてしまうのである。

©123RF


とにかく身体像(ボディ・イメージ)というものに並々ならぬこだわりを見せるのが、このサイコパス人間という人種である。
「こんなことしていたら、身体壊すよ...」と、あなただってわかっている。
だが、相手が望むような完璧ボディを手に入れたいのであれば、このまま一心不乱になって突き進む以外に道はない。
時々思い出したように投げかけられる耳障りの良いほめ言葉、それは彼らがあなたを釣るために目の前にちらつかせる「ニンジン」のようなものだ。



ふらふらと、揺れ動いてばかりの相手からの評価に、自分自身の価値をまるごと委ねてしまった今、あなたの気分は安らぎとは無縁の、波乱に満ちたものへと落ち込んでいくばかりだ。



外見へのケチ付けと時を同じくして始まるのが、他の友人が同席する場でのこき下ろしである。
もはや、二人だけの、閉じた空間だけに収まるような話ではなくなってしまった。



サイコパス人間があなたのことを悪しざまに言うとき、その悪口は常に「笑い」「ユーモア」という偽りの姿をまとって現れる。
他の人々もその笑いに加わり、相手側の陣営に与(くみ)するという光景を目にしたあなた。
その内面がどれほど傷ついているか、彼らには知る由も無い。



そもそも、サイコパス人間は「ちょっと冗談がきつ過ぎたようだ」と気付くだけの神経などはなから持ち合わせていない。
だから、あなたが何を言っても、「気にし過ぎだよ」とあっさり交わされてしまうだろう。



いつしかあなたも、相手の言い分に合わせて自分の物の見方を修正し始める。
「彼氏/彼女に楽しみを提供することだけが生きがいの、頭の弱い、ヘンな交際相手」というのが、相手から押し付けられた役割。
その役割を忠実に演じていくうちに、何と、あなたは本当に自分がその通りの人間なんだ、と思い込んでしまうのだ。


【参考資料】
相手を認めない態度をとる 
(...)加害者は言葉以外のコミュニケーションによって<相手を認めていない>というメッセージを伝える。たとえば、何度もため息をついてみせたり、肩をすくめてみせたり、軽蔑するような目で見たり、あるいは言葉を使ったにしても、相手を不安にさせるようなニュアンスをしのばせたり、悪意のあるほのめかせをしたりする。 また、それとなく不愉快な指摘をすることもある。 
こうして、加害者は被害者がしたことや言ったことを否定して、<きみには仕事の能力がかけている>というメッセージを伝えていく。」


モラル・ハラスメント―人を傷つけずにはいられない
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「また、言葉を使って攻撃していく場合は、冗談に紛らわせて批判をしたり、嫌味や皮肉を言ったりすることもある。そうして、『ちょっとした冗談だよ。冗談で死んだ人間は誰もない。』と言ったりするのだ。 
言葉は歪んだ形で使われる。ひとつひとつの言葉には、相手がその言葉を非難だと感じて傷つく、そういった毒が仕込まれているのだ。」
(第2章「職場におけるモラル・ハラスメント」より抜粋。pp.119-120)


こうした変化が起こっている間にも、サイコパス人間の口からはごくたまに、ふと思い出したかのように、かつての理想化段階の名残り、とも取れるような甘い言葉が飛び出す。



「もう、我慢の限界!」
と、業を煮やしたあなたから詰め寄られても
「いつまでもずっと、君(あなた)のことを全力で愛していくから。約束するよ。」
と、いち早く下手に出て、うまいこと切り抜ける。
これが彼らの常套手段だ。

©123RF


「悪かった。自分に非がある。」などとは、口が裂けても言わない、サイコパス人間。
にもかかわらず、あなたは彼らの小賢しい目眩(くら)まし戦術にまんまと騙された。
そして、「やっぱり、変わっていなかった。私が最初に好きになった時のあの人と、同じままだった。」と、自分で自分を納得させてしまう。
それ以外のことは、全て「どうでもいいこと」。
ゆえに、脇へと押しやられてしまった。


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