具体例をもう一つ出そう。
彼らとの付き合いが深まるにつれて、あなたはだんだん愛情飢餓へと陥っていく。
相手の周囲にじっとりとまとわりつく自分が、何とも「重たい」存在のように感じられてくるに違いない。
だが、この「重たい感じ」もやはり本物ではない。
捏造された感情だ。
仕込んだのは、サイコパス人間である。
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そもそも、付き合い始めた頃、ひっきりなしにあなたに話し掛け、注目と関心のシャワーを浴びせかけてきたのは、一体どちらだったろうか。
あいつら、だろう?
あなたに一旦飽きが来るや否や、たちまちバッシングへと転じてきた、あいつらだ。
強引に自分のペースに巻き込んでおきながら、「お前、まだそんなことを期待しているのか、厚かましいな」と罵る、あの連中だ。
嫉妬心同様、愛情飢餓...「重たい女/重たい男」という感じ...も、あまりに度が過ぎれば二人の関係をぶち壊すものとなりかねない。大方の人はこれに同意してくれると思う。
だが、本物の愛情飢餓状態と、サイコパス人間があなたの中に作り出す、ニセの「愛情飢餓状態」とは、全く似て非なるものである。
ケース1:
彼女1:あ、そうそう。私、おばあちゃんに夕食の用意をしてやらないといけないから、今夜はそっちに行けないんだ。ごめんね!
彼氏1:えっ、そりゃないよ。君、もう3時間も外、ほっつき歩いているじゃないか。どうなってるんだよ。 だったら、出先からこまめに連絡入れてくれるよね?
上のケースに登場した彼氏のセリフからは、いかにも愛情に飢えた人という感じの雰囲気が漂う。確かに、これはどうにかしないとまずいかもしれない。
もし、彼女から何らかの虐待行為を受けた、という事実が全く無いとすれば、この彼氏の愛情飢餓状態は行き過ぎ、と言える。
ケース2:
彼氏2:やあ。もう3日も連絡無いけど、元気にやってる?一応、確かめたいと思って。
彼女2:...あのね、私、あなた以外との人達とも付き合いやら何やらあって、忙しいの。わかってるでしょ?
彼氏2:うん、わかるよ。ただ...今までは毎朝、君から連絡があって、それに慣れてしまっていたから、『あれ、一体どうしちゃったのかな』って思ってさ。
彼女2:いい加減にしてよ。あなたって、どうしてそんなに重たいわけ?私だって、大事なことがいろいろとあるの。それをいちいちストップしてまで、あなた相手にメールだのLINEだのしているわけにはいかないんだってば。
彼氏2:悪かった。重たい奴、と君に思わせたのなら謝るよ。そんなつもりは無かったんだ。
ここ3日間、メッセージを送るのもずっと控えていたぐらいだしね。
彼女2:あーあ、やってられない。ここまで重たい男の人って、あなたが初めてよ。
彼氏2:だから、本当にごめんってば!もう邪魔しないから。
彼女2:わかった。まぁ、勘弁してあげる。 でも、あなたのこういう、じと~っと重たい、愛情乞食みたいな性格。 何とかしてもらわないと、先が思いやられるわね。
このケース2でも、サイコパスな彼女は3つのことを成し遂げた。
- まともな人間ならば、どうしたって愛情飢餓状態とならずにはいられないような状況へとあなたを追い詰めた。相手から四六時中関心と注目を注がれていた理想化段階を体験した後では、そうなるのも止むを得ない。
- あなたのことを「じと~っと重たい」「愛情乞食」と一方的に断罪。ちゃんと落ち着いて、筋の通った返答をしたというのに。
- 自分でいさかいの種を蒔いて置きながら、あなたには「許してやろう」と、上から目線の物言い。「立派な警官」の役へとちゃっかりと収まる一方で、【教師ー生徒】というお気に入りの図式へとあなたを嵌(は)めた。
こうした加虐・被虐の関係がずるずると長引けば長引く程、「やっぱり、私って(俺って)じと~っと重たい奴なのかな」と、ますます思い悩むことが増えていく。
他にも、被害妄想、怒り、ヒステリー発作...など、とにかくサイコパス人間との接触で湧き起こる醜悪な感情は全て、上で説明したような図式で説明がつく。
とりあえず、今はこの二例にとどめておこう。
そもそも、あなたと相手が愛ある健全な絆で結ばれているのであれば、今、僕が書いたような状況へと追い込まれるようなことは、断じてあり得ないのだ。
あるはずがない。
【参考資料①】
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「心理的に健康な人は自分に親切にしてくれた人には感謝をする。相手の思いやりを嬉しく思う。『有り難う』と素直に言う。
それに対して神経症的な人はとにかく自分を蔑視しているのだから、自分によくしてくれる人を尊敬することはない。
得する相手とはつき合う。しかしそれはあくまで得するからつき合うので、相手の人格を尊敬しているからつき合うのではない。 その点をしっかりとつかむことである。」(p.52)
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サイコパス人間と係わったことで、あなたのバウンダリー(境界線)は幾度も揺すぶられ、厳しい試練にさらされた。その間、あなたは自分に出来る精一杯のことをした。
最悪の状況の中にあった時でさえも。
あなたの人となり。
今、あなたが抱えている気持ち。
今度、あなたについて一方的に決め付けたようなことを言う奴が現れた時は、必ず毅然として「No!」で返すこと。
そのような類の決め付け発言は、断固として拒絶しなければいけない。
【参考資料②】
「自己愛人間は、自覚なしに境界を侵害する。あなたの郵便物や日記は読まれる。浴室や寝室のドアはないも同然。財布の中身は抜き取られる。衣類や化粧品や持ち物は『拝借され』、会話は盗み聞きされる。おせっかいな質問をされ、訊いてもいない意見を押しつけられ、アイデアは盗まれ、秘密は守られない。 (...)
クライアントの多くが自己愛人間に次のようにいわれた経験をもつ。
『それはあなたの本心じゃない』
『きみの考えはこうだ』
さらには『これがあなたという人間だ』とまで。」
(第1部 自己愛人間の七つの大罪 7 相手を自分の一部とみなす より pp.56-57)
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「戦略3 境界を設定する
故意に自分を放棄しすぎないこと。自分でつくりあげたイメージをかじらせておくのはいいが、彼らがつねにあなたを糧にするのを許してしまうのは、あなたの自尊心にとって非常に危険だ。
築いた境界が通り抜け可能になっているか、すぐにもサドマゾ的な関係につながる不健康な欲求が、あなたの側にあるのかもしれない。 自分の忍耐の限界を知り、自分の身を守ろう。」
(同書、第4部 あなたのまわりの自己愛人間たち 17.職場の自己愛人間---権力の乱用 より pp.202-203)