2018年6月5日火曜日

喪失の段階---Part 1 ①荒廃

喪失の段階---PartⅠ 

回復への道を歩み始めた頃のあなたは、あたかも一陣の旋風(せんぷう)と化したかのようだ。
...全てが混沌としていて、不安定で、なおかつ制御不可能、だからね。


この段階では、サイコパスに遭遇した、との認識にまだ到達していない人が大部分ではなかろうか。
あなたも、自分ばかりを責めて「もう二度と幸せにはなれないんだ」とひたすら落ち込むばかりだったろう。
普段ならばまず考えられない、といった行動にもつい走りがちだ。

あなたの自信と自己像がめちゃくちゃに破壊されたのは、あいつから受けた虐待のせい。
なのに、あなたはまだそれすら理解できていない。
...理解するどころか、相手からの仕打ちを「虐待」として捉えてもいなかったりする。


今のあなたの頭にあるのは、ただこれだけ。
「これほど深く傷つけられたのは、生まれて初めてだ」。


だが、あなたの旋風がどれほど目まぐるしく回転しようが、荒れに荒れようが、決して希望を失ってはいけないよ。
暗闇に突き落とされるような体験をしたのは、あなた一人だけじゃないんだ。
じきに何もかもが良い方向へと動いていくはずだよ。





荒廃


症状:虚しさ、ショック、薬物乱用、自殺念慮【注】、集中力の低下、抑うつ状態、身体機能の悪化。

【注:自殺念慮:「死にたいと思い、自殺することについて思いめぐらす事。自殺願望、希死念慮などとも言う。うつ病の精神状態などに数え上げられる。
 
...Weblio辞書・実用日本語表現辞典より引用。】

破局してすぐにやって来るのがこの段階だ。
ここでは、心身がひたすらすり減っていくような荒んだ状態を経験することになる。
心も頭も働かず、麻痺したまま。ちょっとした作業をこなすのもひどく困難になる。


脳内化学物質にどっぷり依存していたところを、いきなり引き離されたようなものだからね。
これを依存症同様に扱うとすれば、禁断症状特有の、あのもうろうとした状態がダラダラと続くことも覚悟せねばならない。


体調も悪化していく。鏡に映った自分の姿は今にも崩れ落ちそう。物の怪に取り憑かれでもしたかのような異様さだ。
試しに、サイコパス人間からの虐待を受ける前と、虐待された後とに撮った写真を比較してみるといいよ。
あまりの容貌の違いに、自分でもぞっとするだろうから。


性欲だって激しく上下に変動する。
別れたあいつの身体を狂おしいほど求めずにはいられない日もあるだろう。一方、永遠にあいつは失われてしまった、との酷い現実に落ち込む日もあるだろう。落ち着く兆しは見られない。


心理面でも非常に脆くなっている。生傷がむき出しになったような状態だ。
あいつのせいで自分らしさをひどくむしばまれてしまったあなた。だが、この時点では、自分がそうした被害に遭ったことにすら気が付いていない。


心に受けた虐待の余波は、この先一体どこまで広がっていくのだろう。現時点ではまだ皆目見当もつかない。
そのため、あなたは奴から受けた傷を癒すという段階にも到達できず、【犠牲者】のポジションで立ち往生するばかりだ。


「自分が至らなかったから、こうなった」
「あの人がいない人生なんて。もう、生きていたってしょうがない」
「嫉妬の鬼で、頭おかしくって、重たいんだって...良いところが一つも無いんだ、私」
悪いのは自分、とひたすら信じ込み、少しも疑いも挟まないあなた。
生きている価値なんて無い、とすら思えてくる。


かつては外界と自分とをつないでいたつながりが、今や全て失われてしまった。そんな心境にあるのではなかろうか。
元々持っていた共感能力・認知能力も見事になぎ倒されたかのように思われるだろう。
まぁ、それは単に一時的なものに過ぎないのだけれどね。


後で振り返って確認して欲しい。
この「荒廃」の段階で起こった出来事は、そのほとんどが記憶に残らないはずだ。
耐えがたいほどに辛い出来事や、思い出すだけで恥じ入りたくなるような出来事がこの時期に生じてきたとしても、あなたの脳はそれらを自動的にブロックしていくはずだ。
幽体離脱体験の際にも、似たようなことは起こるらしいね。



何らかのメカニズムが作動して、あなたの中で「シャッターが下ろされる」んだ。
自分の魂を保護するためにね。



喪失の段階。
それは、あなたの心の中の「シャッターが下ろされ」遮断された部分を、少しずつ日々の暮らしの中へと引き戻していく、という作業の時期でもあるんだよ。



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