ソシオパスは、よくこれをやるんだ。
出会った当初は、無邪気で、謙虚で、いい意味での子供っぽさがあって、その上思慮深さも併せ持った人...といった感じ。
「こんな人、めったにいない!」と惹かれる気持ちも、まぁ、わかるよ。
だが、その魅力は付き合いが長引くにつれて色あせていく。
しばらく一緒に過ごしていれば、メッキはひとりでにボロボロと剥げ落ちてくるはずだ。
傲慢そのもの。
人を操り、それでいて仕事ぶりは雑な、バケモノ野郎。
奴の本当の姿はそんなところさ。
新しいターゲットを捕獲すると、まずは【最高バージョンの自分】に変身し、そこから仕込み作業に入って行く。それがあいつのお決まりパターンだ。
必殺技は「赤子のような魅力」。
狙った獲物はまずこれでイチコロとなる。
なぜ子供っぽいふりをするのか、って?
世間では「いかにも傲慢、といった感じの人は苦手」と言う人の方が圧倒的に多い。
だから、ソシオパスはおのれの傲慢さにひとまず蓋をする。
で、本性を慎重に隠しつつ、狙いをつけたターゲットに接近、という作戦に出る。
「あら、この人、意外と傷付きやすいんだ。かわいい~!」と思わせてしまえばしめたもの。
「愛されペルソナ」の仮面をつけさえすれば、獲物なんて簡単につかまえられる。
だが、ターゲットが完全に奴の手中に落ち、「もう逃げる心配は無い」となった辺りからは、さすがのあいつも本性を隠しきれなくなっていく。
独善的。
やたらと偉ぶる。
おまけに、自己愛人間(ナルシシスト)。
何よりも、誰よりも、自分が大事!と来ていやがる...。
無邪気系愛されキャラクターから、あっという間にその対極にある自己愛バケモノへと姿を変えてしまったソシオパス。
ターゲットは、ただただ当惑することしかできない。
【嘘だ。私が覚えているあの優しい人と、今ここで荒れ狂っているバケモノとが、まさかの同一人物!?
そんなこと、絶対にあり得ない...。】
悪夢のような現実と、自分の内面世界との間にどうにかこうにか折り合いをつけない限り、気が狂いそうだ。
ということで、ターゲットは一人で悶々と苦しみ続ける。その後も、ずっと。
ところで、あなたは「被害者叩き(victim blaming)」という言葉をどこかで聞いたことあるだろうか?
(打ちのめされて弱い立場にある人に、更なる追い打ちをかけるのが
「被害者叩き」と呼ばれる類の、批判・非難めいた言葉。
「被害者叩き」と呼ばれる類の、批判・非難めいた言葉。
ただでさえ被害者の心は脆く、危険な状態にあります。
ここで不用意にバッシングを受けてしまうと、
心がボキッと本当に折れてしまい、立ち直れなくなる恐れもありますよね...。
世の中には言葉で表現した方が良いこと、たくさんあります。
でも、表現しない方がいいことだってありますよ。
同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に
同じくらい、いや、もしかしたらそれ以上に
たくさんあるかもしれません。
自分の言葉が誰かにとっての凶器とならないよう、気を付けたいもんですね。
──訳者。)
ソシオパスに虐げられただけでも、充分しんどい思いはしているはず。
その上、「被害者叩き」の対処もしなきゃいけないとあっては、ターゲットにされると本当に大変だ。
周囲からはこんな声も聞こえてくるかもしれない。
「あんなダメな男を好きになる方が悪いのよ...自業自得でしょ。」
「『タンゴは一人じゃ踊れない』って言うじゃない?(原文はIt takes two to tango:「喧嘩両成敗」に近い表現。)
...ってことは、どっちもどっち、なんじゃない? あなたの側にも良くないところがあったんじゃないの?」
ちょっと待った。
二人のうち、片方が嘘の上に嘘を重ねて、ニセの人格をこしらえた。
ターゲットにされたもう片方は、そのニセ人格の持ち主のやることなすことにまんまと欺かれたんだ。
本当の被害者なんだよ。
「僕たち、何もかもがそっくりだね」
くさいセリフで相手の心をがっちりつかんで、そこから後はひたすら騙しと裏切りの繰り返し。さんざん振り回され、そして深い傷を負った。
こんなんじゃ、とてもタンゴなんて踊れるわけがないじゃないか。
「喧嘩両成敗」?
冗談はいい加減にしてもらいたいよ。
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